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~いつものあさ~
※ ※ ※ ※
――キイッ……
――バタンッ……
二人の化け物同士が今まで必死になって築き上げてきた【家】の扉を勢いよく閉めると、いつも郵便物を届けに来てくれる郵便屋のお兄さんの姿が目に入ってきた。
――おかしい。
――もう新聞なら、とっくに届いているのに。
「郵便屋のお兄さん――新聞ならもう届いてるよ?」
「ああ、アレン……おはよう。新聞じゃなくてこれを郵便ポストに入れ忘れてしまっていてね……ごめんよ」
――郵便屋のお兄さんは、とても優しい。
――多分、日本人なのだろうけれど黒い髪と黒い瞳をしていて、これまた黒い帽子を被ってて郵便屋特有の緑色の制服を着ている。
太陽のように眩しい笑みを浮かべながら、僕にはある一通の手紙を見せてくれる。ピンク色の封筒に赤いペンで《愛しのクロフォードへ》と小さく書かれている手紙だ。
(クロフォードは――パパの名前だ)
何か、やましいことでもあるのか豆粒のように小さな文字で書かれているためパパの名前が脇に書かれている事は郵便屋のお兄さんでも気付いていないみたいだ。
「それ、僕が預かっておきます」
「いいのかい?悪いね――アレン、それじゃあ気を付けて学校に行くんだよ」
そう言うと、郵便屋のお兄さんは僕の頭を優しく撫でてから自転車で遠くへと去って行く。
それを確認した後で、僕は何の戸惑いもなく手紙の中身を見てみるのだ。
――知らない僕くらいの年の女の子とパパがキスをしている写真だ。
(これ……何枚も入ってる――しかも、パパが女の子に無理やりキスしているみたい……)
――思わず、
悪魔のような笑みを――浮かべてしまう僕。
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