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~ばけものがいないよる~
※ ※ ※
「奥さん――あなたのご主人は自殺したのではなく……あくまで他殺された――と仰りたいのですね?まあ、それはこれから調べる必要がありますが……ご主人の体は……丸焦げ……なかなか証拠を見つけるのは……難しい……」
あれから、学校なんて行っている場合じゃなくなった僕は急いでお家に戻された。そして、その後しばらくしてから来た警察のおじさんと――涙でぐちゃぐちゃになって悲しそうに泣いているママの姿が見えて、思わず聞き耳をたててしまう。
二人共、気まずそうな――或いは困ったような顔をしながら小声で話しているため詳しいお話は明確には聞こえないけれど、車の中で火に包まれた【夜のばけもの】――ああ、今はまだ夜じゃないから【パパだったひと】の話をしている事は僕にも何となく分かった。
「まあ、アレン……アレンったら――こんな……こんな怖いお話を聞いたらダメよ……すぐにお部屋に戻りなさい」
「……ぼく、ママの言うとおりだ……こんな
お話は聞いちゃいけないよ」
そう言われてしまった僕は――仕方なく自分のお部屋に戻るしかなかったのだ。
【夜のばけもの】だった【パパだったひと】が――この世からいなくなったからって油断は禁物だ。生きている頃の【パパ】だって、そう言っていた。
アレが――僕のお部屋の中にある限り、また【夜のばけもの】が地獄から甦って僕に悪さするかもしれない。
(はやく、はやく――アレをズタズタにしなくちゃ……夜のばけものが……よみがえる前に……)
ガチャ……ッ……
お部屋に戻った僕は迷う事なく、机の上に向かうとある物を握り締めると――そのまま、今度はクローゼットへと歩みを進めて行き、ざわざわする気持ちを落ち着かせるために何度か深呼吸をしてからゆっくりと扉を開くのだった。
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