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~しあわせなひととき~
「おい、アレン――これ……」
「……っ…………!?」
――しまった!!
――すっかり、忘れてしまっていた。
僕のお腹には、まだパパという夜のばけものが生きていた頃に口紅で書いた【淫乱な天使】という文字が残っているのに――うっかりしてしまっていたせいで、よりにもよって大事なジャックに見られてしまった。
(いや――ジャックも僕と同じで……淫乱な天使天使っていう言葉の詳しい意味は分からないかもしれない……だから大丈夫、大丈夫だよ……アレン)
僕は内心では慌てながらも、必死で自分を納得させるように心の中で唱えつつ――チラリ、と横にいるジャックへと目線を移す。まるで僕の期待を裏切るみたいにジャックは悲しそうな気まずそうな微妙な表情を浮かべて僕を見つめ返してきた。
詳しい意味は分からないとはいえ【淫乱な天使】という言葉が何となく良いイメージではないと思っていたため不安げな表情を浮かべて、そのままジャックの様子をうかがう。
【まったく、アレンは悪い子だ……やはり、他の男に色目をつかう悪い子のアレンにはお仕置きの儀式が必要だな】
【お前は他の男をたぶらかす悪い子だ。パパと儀式をすれば悪い子じゃなくなるぞ――アレン】
――いつだったかパパという夜のばけものが言っていたように……ジャックもそう言うのかな?
「…………」
「……ジャック!?」
でも――、
ジャックは何も言わなかった。
僕の小刻みに震える体をギュウッと抱き締めてから、頬に優しくキスしてくれる。
何だか――ホッとして僕は目を固く瞑った。
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