「では、これより《シルク・ドゥ・ノワール》の演目を開始いたします………と言いたい所ですが、実は今宵の演目は、皆様方を退屈させないよう、普段のものよりも特殊なものにしてあります。それに伴い、我がサーカス団にゲストを招いております。それが………この……」 ――ﾄﾞﾝｯ！！ Ｒと名乗る男の人の声を聞いていると、ふと後ろから、誰かに突き飛ばされてしまい、僕は前のめりに倒れてしまう。 「………天使のように可愛らしい男の子。名前は、アレン。この子ならば、今宵の演目の引き立て役となるでしょう。それでは、間もなく演目を開始致します。皆様方、もう少々、お待ちください。」 その言葉を言ったのを最後に、Ｒと名乗る男の人の声は聞こえなくなってしまった。 誰かに突き飛ばされてしまい、前のめりに倒れてしまった僕は、おそるおそる顔をあげて客席の方を見上げる。 僕が倒れてしまったのは、中央にある丸く大きな台の上らしく、そこから客席の方が、よく見えるのが分かった。 その客席には、まるでマネキン人形のようにニコニコと不気味に笑いながら、僕を見つめてくる大勢の人達がいた。 誰ひとりとして、心配そうな顔をする人や驚いた顔をする人はおらず、ただただマネキンの様に、皆同じ表情で笑いながら、僕を見下しているのだ。 「………大丈夫かイ？きみハ、案外………どんくさいンだネ。それより、そろそろサーカスの演目が始まる。きみニも危険が迫ってル。だから、ボクのアドバイスを………よく聞いテ。分かったかイ………アレン？」 前のめりに倒れ、周りに座って僕を見下しているマネキンのような奴らに恐怖を感じて動けなくなった僕の耳に聞き覚えのある声がかけられる。 ――それは、ここまで僕を導いてきた謎の声だった。