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~猛獣使い兼ナイフ投げの《P》~
「まずは、火縄くぐりからご覧にいれましょう!」
黒い蛇の《P》が、少し大げさな様子で客席に向かって、そう言うと、いつの間にか、僕と《P》の近くに大きな火のついた丸い縄が用意されている事に気付いた。
「さあ、お前たち……出番だよ!」
声高らかに《P》が、そう言うと周りを取り囲んでいた物が、みるみる内に動物の姿に変わる。その動物の形は、熊だったり、象だったり、虎だったりと様々だ。
そして、今更だが……僕は《P》の周りを取り囲んでいた物が、何なのか分かった。
――――それは、英字が書かれた新聞紙の切れ端だ。
周りを取り囲んでいた《P》の言葉を合図に、一斉に、その新聞紙の切れ端が虎や熊や象といった動物の姿に変わったのだった。
あまりにも、不思議な光景を目にした僕は先程のピエロの警告なんて、すっかり忘れてしまって、目を輝かせながら夢中で見入ってしまう。
もはや、《P》に対する恐怖もその時は消え去ってしまっていたのだ。
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