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~猛獣使い兼ナイフ投げの《P》~
猛獣使い兼ナイフ投げの《P》は、その英字の新聞紙から、姿を変えた動物達を華麗に操っている。
――――熊は可愛らしいダンスを踊っている。
――――象は大きなボールの上に乗っかって、上手にバランスを取っている。
――――虎は僕と《P》の側にある大きな火のついた丸い縄を、戸惑いなく勇敢にくぐり抜ける。
――――その、動物達のパフォーマンスと同時に、鳴り響く陽気な音楽。
どれもこれも、見事なパフォーマンスで、僕の目は釘付けになっていた。
「…………す、すごい!!まるで、夢みたいだ。」
僕は、目の前で起こっている光景を見て、目を輝かせながら、思わず呟いてしまった。
「ああ…………紳士淑女の皆様方、この可愛らしく天使のようなアレンは、禁断の一言を口にしてしまいました。この私の演目を、夢みたいなどと馬鹿にするとは、なんと愚かな!!悪い子には、お仕置きが必要。そう思われる紳士淑女の皆様方は、盛大な拍手をお願いいたします。」
急に猛獣使い兼ナイフ投げの《P》の様子が、今までと変わってしまうのが分かった。
それまでは、冷静で丁寧な口調だったのに、僕が呟いてから――まるで人が変わったかのように敬語のままだが、どことなく怒った口調で、客席にいるマネキンのような《紳士淑女の皆様方》へと話し掛ける。
―――パチ
――パチ――パチ
――――パチ
再び、客席の方から《紳士淑女の皆様方》の盛大な拍手が聞こえてきたため、これから何が起こるか分からず、僕はまたしても不安になってしまったのだった。
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