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~空を舞うプリマドンナ《an・na》~
「ぼ、ぼくが……怖いと思っているもの!?何で、何で君はそんな事を知っているの!?ぼくは―――君の事を何も知らない!!会ったことすらないのに……っ…………」
―――フワリッ
軽快な動きで《an・na》と名乗った黒いカラスみたいな見た目の女の子が、僕の元へと天井に張り巡らされた蜘蛛の巣のような網の上から舞い降りてくる。
ズルリ…………
ズルリ、ズルッ…………
すると、何処からか――嫌な音と気配が忍び寄ってくるのをアレンは反射的に察知した。そして、おそるおそるそちらへと目を向ける。
そこには―――、
【天使のように――可愛い私のアレン―――】
【さあさあ、すぐにご飯の用意をするわ―――】
【ハンバーグに、スパゲッティ―――それとも他の、お料理にする?】
【アレン、可愛いアレン――あなたは何がいい?さあ、早く――早く答えなさいっ――悪い子ねっ!!】
僕の元へと舞い降りてきた《an・na》というカラスみたいな見た目の女の子の影から直接伸びている―――真っ黒なママの姿だった。
このような異常な状況だというのに、ママの声や振舞いは―――この奇妙な世界へと来る前と全く変わらない――陽気で優しく僕に微笑みかけながら話すママと同じなのだ。
今は―――それさえも、おそろしい。
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