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~空を舞うプリマドンナ《an・na》~
(ママを装ってる朝の化け物の苦手なもの……苦手なものって何だろう―――ああ、それって……もしかして……っ……)
マネキンみたいに同じ顔をしてる不気味な観客苦が織り成す狂喜じみた拍手と、【an・na】というカラスみたいに真っ黒な衣装を着てる女の子、それにママを装ってる【朝の化け物】が織り成す甲高い笑い声が辺りに響く中―――苦手で堪らない蜘蛛の大群に取り囲まれつつ、このピンチを乗り越えるために僕は必死で考える。
そして、その末にたどり着くひとつの考えは僕に驚きと悲しみを与えるには充分だった。でも、同時にママを装ってる【朝の化け物】を消え去るという目的を果たす為にはもうひとつしなければならない事があると思い直した僕は天井に電線のように___或いは蜘蛛の巣のように張り巡らされている強靭な綱の上で優雅に舞い続けながら僕を見下すように優越感たっぷりの笑みを浮かべてくる【an・na】に対抗するという思いを込めて睨みつける。
まずは、【an・na】という存在を消し去らなければママを装ってる【朝の化け物】が永久に消え去る事はないと確信していたから___。
それに、同じ顔をしてるマネキンじみた観客達の中に混じって―――僕を此処まで案内してくれたピエロが『キミなラ、出来ルよ』といわんばかりに此方をジーッと情熱的に見つめてくるから___。
だから、僕は右手に持ったスノードロップの花に、あるひとつの強い願いを込めたんだ。
『真っ赤な口紅に姿を変えて!!』
それが、僕の___僕の姿を装ってる【an・na】を倒して消し去るための大切な願いなんだ。
【an・na】は僕の分身―――つまりは、もうひとりの僕___。
【パパが望んだ可愛い天使みたいな女の子という姿を装って僕の心に巣食ってた化け物】なのだから___。
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