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~喜怒哀楽の道化師《P・E》~
「全てをさらけ出すのに……服なんてものは本来__邪魔なだけだ。アレン、かつて君だって言ってたことじゃないか。ジャックと一緒にボクをバカにして……っ……小豚みたいなボクには服なんていらないって……君の取り巻きである奴らと一緒にボクを笑ってたじゃないか__」
ふる、ふると小刻みに体を震わせるエディの言葉を聞いて___ふっ……と、かつての学校でのやり取りを思い出す。
◆◆◆
ある雨の日の事だった__学校終わりで帰ろうとした僕とジャック、それに取り巻きの三人の男の子達が__退屈を持てあましていた。雨の日だったから運動場で遊ぶのも嫌だ、と僕が言ったらジャックと取り巻きの男の子達がニヤニヤしながら側にいて何かを言いたげなエディに目を付けた。
『おい、あいつ___また自作のパズルしてるぜ?根暗な奴……つーか、男なのにサッカーとか野球もしねえとか……本当に男なのかよ。女の子みたいに可愛いアレンでさえ―――俺らと一緒に遊んでくれるのにな』
『なあ、なあ……俺さ――良い事を思い付いたぜ。あのエディの野郎の服を脱がせてよ……的当てゲームしてやろうぜ!!どーせ、あの野郎だって暇だろ___なあ、いいかな……ジャック?』
『はあ?何で、いちいちオレに聞くんだよ……』
あの時、確かジャックがほんの少しだけ迷ったような顔をしてチラッとエディの方を見て___こう言ったんだ。
『あ~……まあ、いいんじゃね?あいつが暇なのは確かだろうしな。遊んでやりゃ、あいつだって喜ぶんじゃねえの?』
僕は、何も言わなかった___。
何も言わずに、用事があるから僕は帰るねって嘘の言葉を伝えてその場から離れたんだ。いや、ただ離れただけじゃない。
今にも泣き出しそうなエディの顔を見てたのに___。
すがるような目付きで僕の顔を見て何かを言いたげだったエディの様子を見てたのに___卑怯者な僕はその場から逃げる事しか出来なかったんだ。
よくよく考えてみれば、あの後に意地悪な彼らから酷い目に合わされたんだと分かったのに__。
そして、それは僕があの時に一言でいいから『止めなよ』と言えば防げた事かもしれなかったと分かったのに__。
◆◆◆
むしゃ、むしゃと___夢中で僕の服だけを食べていく彩りの風船を見上げながら僕の目から涙が溢れる。そうして、僕は生まれたままの一糸纏わぬ姿となる。
その途端に、惨めな姿を嘲笑い見下ろすように僕の目に飛び込んできたのは、赤色の【怒】__の風船。
【なあ、なあ……俺さ――良い事を思い付いたぜ。あのエディの野郎の服を脱がせてよ……的当てゲームしてやろうぜ!!どーせ、あの野郎だって暇だろ___なあ、いいかな……ジャック?】
すると、ニヤリと中央部分に浮かんでる【口】の形が歪んだように動いてから、かつて学校で聞いた取り巻きの男の子の口調と全く同じ言葉を言い放ってきたのだ。いや、口調だけじゃない。声そのものも___かつてクラスメイトであり僕の取り巻きだった男の子と同じなのだ。
そして、僕を追い詰めるかのように___ゆっくり、ゆっくりと赤い風船は姿を変えていく。それは、正に__学校で僕の取り巻きを名乗っていたタイムという男の子そのものの姿であった。唯一、違うのはかつての取り巻きの男の子と違って目の色が赤色だという事のみで、青いシャツに黒い半ズボン姿という服装までもがあの日とそっくりだ。
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