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~喜怒哀楽の道化師【P・E】~

「……っ…………んっ……!?」 苦い苦い、そのドロドロの白濁液は―――途徹もない恐怖のせいでガチ、ガチと歯を鳴らし、半開きとなってしまっている僕の口の中に容赦なく入り込んでくる。 苦いだけじゃなく、とても熱い___。 ベロが麻痺してしまっているのか、それともその白濁液が熱いと思うのは僕の思い込みなのかは分からないけれど、ドロドロの白い液が口に入る度に、僕の意思に反して頭の中は幸福感で満たされ、喜び―――まるで、かつてジャックからされたエッチな行為の時に感じていた言いようのない心地よさを感じてしまい体がビクン、ビクンと震えてしまう。 (頭がボーッとする……それにこの熱さも苦みも___かつてジャックからされたあの行為の時に感じたのと同じ……) 「ジャック……もっと……」 思わず、呟いていた___。 よくよく考えれば、ジャックにはもう二度と会えないって分かっていたのに―――。 目の前にいるのが愛しいジャックじゃない事なんて彼の最期を目の当たりにして嫌でも分かっていたのに―――。 【アレン、ジャックから愛されてて天使みたいだって言われてたアレン―――愛するジャックはもう此処にはいないよ。ジャックの命は―――キミが奪った……ボクにここまでさせたのはキミだ……キミがボクの救いを乞う叫びをむげにして……見てみぬふりをしてたキミのせい……っ……キミを幸せになんかさせないよ……キミを気持ちよくなんかさせてあげない……偽りのジャックとの甘いひとときは終わりにしよう……】 パチンッ…………!! またしても、無表情のまま僕の目をまっすぐに見下ろしてきたエディが心の込もってない声で言い放つ。そして、再びパチンッと指を鳴らした途端に―――今までかつてのクラスメイト達の姿をしていた三つの風船達はフシュルルル、と気の抜けた音をたてながらしぼんで空気が抜けていく。 一見すると、その場か消え去ったかのように思われた【喜・怒・楽】___つまり、黄色と赤色と桃色の風船だったがそうではなかった。 今度は、またしても姿を変えて僕の前に再び現れる。 バルーンアートによくあるウサギの姿。細長い風船をねじ曲げたりして作る【三匹の白いウサギ】が今の内に起き上がり急いでエディの元に駆け寄ろうとした僕の前に立ち塞がるのだった。 辺りからは___ハッピーバースデーの歌が聞こえてくる。

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