76 / 98

~喜怒哀楽の道化師【P・E】~

見覚えのある黒いドレスに、普段好んでよく着ていた青いシャツ___その他にも愛着のある洋服たちに囲まれている僕はいきなり飛び込んできた眩い光を浴びて思わず目を細めてしまう。 【あ~あ……今日も幼稚なエディが来る__僕はもっと刺激的な遊びがしたいのになぁ……仕方ないや、僕は天使みたいに可愛くていい子にしてなきゃいけないからエディの好きなお人形さん遊びに付き合ってあげようっと】 眩い光に包まれた直後に聞こえてきた【僕】の大きく響く声が聞こえてきて確信するしかなかった。 今、僕がいる場所___それは【僕】の部屋だ。かつて、何度もエディを呼んで遊んであげた【僕の部屋】のクローゼットの中だ。 何故、かつて僕が暮らしていた部屋のクローゼットだと分かったのか―――。 それは【僕】がお気に入りの洋服がかけられていたからだけじゃなく、よくエディの遊びに付き合ってあげた時にクローゼットから出していた《おもちゃ箱》と下手な字で書かれてる段ボール箱がすぐ側にある事に気付いたからだ。 【みーつけた、僕の姿をしたお人形さん―――ねえねえ、早く僕と一緒に遊ぼうよ?遊ぼうよ?幼なじみだけど本当は見下してたエディだってそれを望んでるよ―――あの子も心底から僕と楽しく遊びたいって思ってる!!】 嫌だ、と声を出したいのに―――叶わない。 このままでは、エディに対してかつて行っていた酷い事を詫びる事さえ叶わない。そう思った途端に罪悪感が僕の胸を支配して涙を流しそうになる。でも、それさえも叶わない―――僕は今、服を纏う事さえ叶わない【お人形さん】だからだ。 これは、かつてエディが好きだった【お人形さん遊び】を心の底でバカにしていた僕に対する罰だ。 本当はエディなんかと遊びたくないと心の底で彼を見下してた僕に対する罰だ。 「(ご、ごめん……ごめんなさい……エディ……)」 言葉には出せない代わりに、僕は精一杯の気持ちで幼なじみであった彼に心の中で必死に謝罪する。 すると、僕と同じ声をしたナニカが声高々に言い放つ。 【あはは―――何を今更謝っているんだい__アレン!!天使みたいに可愛い僕には涙なんか似合わない……そろそろ、舞台を変えてうわべだけのお遊戯を楽しもうじゃないか!!】 僕の声と全く同じナニカの手が迫ってくる___。 【お人形さん】である僕はろくに抵抗すらままならない___。 そんな無力な【お人形さん】の僕はすっぽりと体を覆ってしまう程に巨大なナニカの手によって捕まれて引き寄せられてしまったとしても___為す術なく、ただひたすらエディに謝罪することしか出来ないのだ。

ともだちにシェアしよう!