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~お人形さんは【真相】を知る~

◆◆◆ 背後に感じた不気味な気配___。 それは、とてつもなく巨大化しバルーンアートと化した僕とエディの姿だ。カラフルだけれども無機質で__顔の部分には目や鼻や口といったパーツが存在していない。いわゆるのっぺらぼう状態だ。それなのに、愉快げに遊んでいる雰囲気を醸し出しているのは不気味としか言い様がない。 【あ~……ごめん、ごめん___キミのお人形さんを落っことしちゃったよ……わざとじゃないんだよ___小豚みたいなエディ……お詫びにキミの望む事をひとつ叶えてあげる……さあ、言ってみてよ……僕の大事なお友達のエディ……】 【だ、大丈夫だよ……天使みたいに可愛いアレン……それじゃあ___そこに落ちてる哀れなお人形さんで遊ばないかい?だ、大丈夫……キミが落っことして転がっちゃったお人形さんはめったな事じゃなきゃ壊れはしないから___そうだ、お人形さんといえばドールハウスだよね……クローゼットの中に《Memories of that day》って書かれてる段ボールの中からドールハウスを持ってきてくれる?】 のっぺらぼう状態のバルーンアートと化した___【天使みたいな僕】と【小豚みたいなエディ】が口など存在していないのに笑いながらやり取りしている様を見て、かつて僕の部屋でエディと共に遊んでいた時の事を思い出す。 ただでさえ弱々しいエディは__女の子みたいに【お人形遊び】をしていたせいで父親から見捨てられて母と二人暮らしになったというのを聞いていたけれど、あの頃の僕にとってそんな事はどうでもいい事で__本当は碌に聞いておらず受け流していた。 そういえば、エディが機械仕掛けのパズル遊びにのめり込んでいったのは__ちょうどその直後からだ。以来、エディは僕と二人っきりになった時も【お人形さん遊び】をする事は二度となかった。 僕のパパよりも厳格な父親に見つかるのが嫌で、嫌で堪らなくて僕の部屋にドールハウスやお人形を隠してくれないかと散々頼み込むくらいにはのめり込んでいたというのに__。 【はい、小豚みたいなエディ___ドールハウスの入った段ボール箱を持ってきたよ……ついに……そこに転がってるお人形さんに《真実》を教えてあげる決心が___ついたんだね】 【あの日の記憶_____それはね……】 小さな、小さな人間の中指程に縮んだ僕の体を掴んだバルーンアートの【僕】___。やっぱり風船だから体温は感じないし、ツルツルしている。 キュッ……キュ……という風船の独特な音が僕の耳を刺激した直後、見覚えのあるドールハウスが真正面に飛び込んでくる。 ___チョコレート色の屋根に、丹精に育てられたガーベラや薔薇が咲き誇る美しい庭。 ___僕の家と違って夜でも昼でも関係なく車が停まっていない広々としたガレージ。 ___こだわりなのかチョコレート色の屋根と同じ色の郵便受け。 このドールハウスの外観は散々見覚えのある___僕の隣の家、つまりはエディの家だ。 体をピクリとも動かせないお人形と化した僕は、意思とは関係なく強引に【エディの家とソックリなドールハウス】の中へと入れられてしまうのだった。 【あの日の記憶】というのは___いったい、いつの記憶なのだろうか。

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