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~お人形さんは【真相】を知る~
人間の片手程に小さくなった【お人形】となった僕はバルーンと化した【小豚のエディ】の手で胴体を強く握られてしまい、もはや自分の意思では動く事も――それどころか声すら出す事さえ叶わない。
【た、ただいま……daddy(ダディ)___お友達のアレンを……連れて来たよ】
【…………】
エディの震える声___。
何も答えないエディのdaddy___。
バルーンアートと化した【エディのdaddy】は__息子であるエディに対してだけでなく客人である僕にさえも目を向けようともせずに、ただひたすら一点だけを見つめている。
新聞に掲載されているギャンブルの結果の記事___。それと、机の上を埋め尽くす程にゴロゴロと転がっている酒瓶。エディの父は___それにしか興味がないのだ。ギャンブル、酒さえあれば彼は満足なのだ。妻や息子の事など感心がないくせに、外面だけは良い父を演じていたエディの父は自分の世間体が揺らぐ事が起きると悪魔になった。普段は息子のエディに対して興味がないくせに、ことに【彼のお人形さん遊び】に対しては異常な程に怒り狂った。
男のくせに女の真似事など___情けない。
そんなだから弱くて苛められるんだ、と叱り付けた。
やがて、エディの父は妻と息子を捨てて出て行った。彼が何処にいるかなんて知らないし、どうでも良い事だと僕は思った。
【に、二階に行こうよ___アレン。ぼ、ぼくの部屋はそこにあるからね……って……そんなのは分かりきってる事か。こんな事を言うと__また賢いキミにバカにされちゃうのかな】
そんな事ない、とすぐに言いたいのに__それはお人形さんだから叶わない。
とん、とん………きゅっ……きゅ……
階段を昇る音と、風船が擦れあう音とが混じり合いながら___僕は半ば強制的にエディの部屋がある二階へと連れて来られる事となるのだった。
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