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~ボクは【道化師 P・E】だから~
「どうして……っ……!!」
それしか言葉が出てくれなかった。
エディに聞きたい事はたくさんあるっていうのに__。僕は声を震わせながら、精一杯叫ぶことしか出来ない。
【僕がエディと仲良くするふりをして苛めてたから?】
【僕がエディの大好きなジャックを盗っちゃったから?】
【僕がこの町に越してくる前に元々幼なじみ同士だったジャックと暮らしてたエディの幸せな日々を奪っちゃって酷い目に合わせたから?】
皮肉な事に____僕が心の中に留めていて、どうしても言えない言葉を全てお見通しだといわんばかりにエディこと【道化師 P・E】がスムーズに言い放ってくる。
パパやママがまだ生きていた時に、テレビで見たホラー映画のヴィラン__つまりは悪役のピエロみたいな不気味な笑みを浮かべながら、かつてのお友達――いや、お友達という言葉を振りかざして心の底では下に見ていたエディがジーッと暗闇から僕を見据えてくる。
ついさっきまでは、バルーンで出来た偽物とはいえ明るい町の景色だった舞台は――今は、かつてママが行方不明になる前に開いてくれた僕の誕生日パーティーに出ていたショートケーキの上に乗っかっている蝋燭の火を吹き消した時の部屋みたいに真っ暗で、目の前に向かい合っていて【僕の知らないエディ】が身につけてるオレンジや赤、それに黄色といった目に眩しい衣装の色が目に飛び込んでくるのだ。
「ど、どれもこれも____全部違うよ。アレン、ボクはね……君を救うために__身をもって、君のパパに近づいて殺したんだよ。だって、君のパパは悪い奴さ。悪い奴はヒーローがやっつけなくちゃいけない……君だって、パパに苦しめられてたんだろう?君の部屋に貼られてたアニメのヒーローだって、悪い奴を片っ端からやっつけるじゃないか__それの何が悪いっていうんだい?」
「____」
答えられなかった____。
確かに、パパは悪い奴で【夜の化け物】だったんだから。
その時、今まで真っ暗だった辺りがスポットライトの強烈な光で照らされて__僕は認めたくない現実から目を背けるように勢いよく両目を閉じてしまうのだった。
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