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~ボクは【道化師P・E】だから~

赤いカーテンの隙間から、チラリと覗く細長い何本もの足を見て__僕はあまりの恐怖に呆気にとられて微動だに出来なくなってしまう。 ゴムで出来た蜘蛛のオモチャ___。 エディが僕と【ドレスで着飾ったお人形さん】と遊ぼうとして取り出してきたオモチャ箱の中に一緒に入っていた真っ黒なゴムで出来た小さな蜘蛛のオモチャ__。 僕がエディと【ドレスで着飾ったお人形さん遊び】をしたくなかったのは____本当はそのゴムで出来た蜘蛛のオモチャを見るのが怖かったからだ。僕は蜘蛛が大の苦手だったから。それにも関わらず、ちっぽけな見栄をはって――臆病者だと思われないように『嫌だよ、エディのお人形さんとは遊びたくないよ……男の子なのに格好悪い』と言ってしまった。 あの時、エディは何も言わずにジッと僕の目を真っ直ぐに見つめて微笑みながらオモチャ箱の蓋をしめてクローゼットの中にしまい込んだ。そして、それ以降__彼が僕に【お人形遊び】をしようと言う事はなくなった。 その【蜘蛛のオモチャ】と____再び向き合う時が来たんだ。今度は、ちっぽけな見栄をはって逃げる訳にはいかない。 再び向き合う事になったその【蜘蛛のオモチャ】の大きさは、いくら僕が子供で小柄とはいえ__何十倍も巨大であり、まるで自分が小人くらいに縮んでしまったような感覚に陥ってしまった。しかも、蜘蛛のオモチャの複数の足先から伸びる糸に首や両腕__それに両足に至るまでぐるぐる巻きにされて吊るされてしまっている【道化師の格好をしたエディ】が、かつて【お人形さん遊び】を拒絶してしまった時みたいにジッと僕を恨めしそうに見つめてくるのだ。 その顔は、まるでお化けみたいに生気がなく真っ白だ。ゴムの蜘蛛のオモチャがそれぞれの足を動かす度に道化師の格好をしたエディの手足が同じタイミングで動く。まるで、操り人形のように____。 そして、蜘蛛のオモチャが無理矢理、道化師の格好をしたエディの手を動かしたタイミングで___辺りに群がる【エディが大好きだったドレスで着飾ったお人形】達も行動を始める。 もちろん、僕をやっつけるための行動だ。 トコ、トコと___三体のお人形さんが僕の前までやってきて、ドレスの裾を両手で摘まむと可愛いらしく三人揃ってお辞儀した。 【あたしはアインス___天使みたいな金色の髪の毛が自慢なのヨ……賢くて美人なのが自慢なのヨ……踊りだって得意ヨ?】 【わたしはツヴァイ____アインスみたいに賢くはないし美人じゃないけど踊りは負けないくらいに得意ダ……キレのある踊りを見せてやる】 【ぼくはドライ____アインスみたいに賢くはないし美人でもない。ツヴァイみたいにキレのある踊りが出来る訳じゃない……どうしようもない、みそっかす。でも、こんな__みそっかすなぼくにも得意な事はある】 「今度こそ____お人形遊びをしよう、エディ……僕はもう……逃げたりしない。必ず君を__助けてみせる。そして、君をしかるべき場所におくってみせる……さあ、始めよう!!」 眩しいスポットライトが【蜘蛛のオモチャ】と特別なスノードロップの花を構えた僕を照らす。その途端、周りの【紳士淑女の皆様方】の拍手が今まで以上に喧しく響き渡るのだった。

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