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★【団長R】が《奇妙なサーカスの真実》を届けにくるよ★

『患者ガ……逃げマシた……職員及び一部ノ患者ハ__重症患者ノ……ゆ**……ヲ__至急……探シ、探シ……テ――』 目を覚ましてから、最初に僕の耳を刺激したのは女の人の声だった。 その直後、首をゆっくりと回すことで徐々に見えてきた光景は訳が分からない内に意識を手放してしまった僕を混乱させるには充分過ぎるほど____。 周り一面のひび割れたコンクリートに覆われていて、そのひび割れの隙間から緑色の雑草が生い茂り、灰色で無機質な冷たいコンクリートと思わず見惚れてしまうくらいに美しい緑色で生命力溢れる雑草といった対照的な光景が目に飛び込んできた。 壁だけでなく、床にも深いひび割れがあり__そこからも雑草がはみ出てしまっている。雨上がりの独特な草の匂いが僕の嗅覚を刺激し、尚且つ__何処か近くから聞こえてくる不気味な女の人の声は僕の聴覚を刺激する。 『い……マシた____ゆ** ヲ……見つケ……マシた……マシた……No.1ビルド――ハ……至急、至急……至急、至急……シキュウ――患者ヲ……』 と、そこで女の人の不気味な声は途切れてしまった。何となく嫌な気がした僕だったけれど、いつまでも床に寝そべっていてもどうしようもない、と――とにかく今の異常な状況をなるべく理解しておくためにゆっくりとうつ伏せになっていた体を起こす。 すると、ある違和感を抱いた。 おそるおそる、目線を手元に向ける___。 いつの間にか、僕はピョコンとした細長い両耳にピンクのリボンを着けたウサギのぬいぐるみを右手に持っていたんだ。 この奇妙な部屋にくる前までは、そんなぬいぐるみなんて持っていなかったはずなのに____。 ギィッ……と突然、何の前触れも――ましてや、ノックもなくコンクリートまみれの奇妙な部屋のドアが開いた。バタンッ__と勢いよくドアが閉まり、僕は息を潜めて膝を地面につけるとそのまま横になって倒れていて埃まみれの医療棚(ここは廃病院らしい)の陰に隠れる。 横になって倒れている医療棚の辺りには、粉々になっている薬品の瓶やら壊れた注射針なんかが散乱しているため踏まないように注意しながら部屋の中央にある錆びかけた診察台の方へチラリと目線を向けた。 僕がそうした理由は、ただひとつ____。 ドアが開いた直後、ドスドスとわざとらしく音を立てながら誰かが錆びかけた診察台の方へと歩いてきたからだった。 あまりの恐怖と不安から歯がカチカチと鳴りそうになってしまうのを必死で堪える。謎の人物は手に猟銃を持ち、尚且つ――愉快げに鼻歌を歌いながら明らかに獲物を探して辺りをウロウロと歩いて回っている。 普通に考えれば、ヤツの【獲物】は僕しか有り得ない。 例え、ヤツが顔をスッポリと覆うように茶色の紙袋を被っていても__怖いものは怖い僕は息を殺して医療棚の陰に隠れることしか出来ないのだ。

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