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★団長【R】が奇妙なサーカスの《真実》を届けにくるよ★
「う……っ____!?」
手紙を震える手で開封した途端、僕をピンク色の煙が襲う。あまりにも突然だったせいで、僕は訳も分からず、咄嗟に開封しかけた手紙を少し湿った土の上へ落としてしまった。
とても、不思議な気持ちだ____。
開きかけた手紙からモウモウと吹き出すピンク色の煙を顔に浴び、尚且つ吸い込んでしまった僕は心の中にある【恐怖】と【不安】といった邪念を全て振り払われ、喜びの感情に支配されてしまったんだ。
それと同時に、先程まで静けさに包まれていた公園には――まるで、町にたまに来るサーカスを楽しみにする人々のような活気に満ち溢れて笑い声だけが響き渡る。
ベンチの周りは、ピエロみたいに微笑みを浮かべる人々が駆け回る。もちろん、それは子供たちだけじゃなく大人もだ。
「あ、手紙……手紙を___拾わなくちゃ」
【そうとも、アレン……さあ__その手紙を拾いなさい。人々に驚きと楽しみを届けるサーカスさながら驚きを届けるピエロもビックリな《真実》が中に入っているよ】
フラ、フラと覚束ない足取りで、落としてしまった手紙に手を伸ばしかけた時だった。
手紙の中から、つい先程――手術台の上に置いた筈の両耳に赤いリボンのついたウサギのぬいぐるみが飛び出してきた。
勢いが良かったため、僕はその場で尻もちをついてしまう。
鈍い痛みをこらえながらも、ちらりと脇に目線をやると、何故か郵便屋のおにいさんは、かつてエディに向けた時と同じような穏やかな目で此方を眺めていた。
すると____、
「わん……っ___わん、わんっ……!!」
「あっ……ちょ、ちょっと待って……っ……それは僕の大切な……っ____!!」
いつの間に現れたのだろうか____。
郵便屋のおにいさんに興味を奪われていた僕は足元でヘッ、ヘッと息を荒くしながら体を揺らす白い犬の存在に気付いた。
そして、その直後に左手に持っていた武器ともいえるスノードロップの花をとられてしまい、慌てて白い犬を追いかける。
その白い犬が、ポメラニアンだということはすぐに分かったけれども――まさか、スノードロップの花を奪われてしまうとは思いも寄らなかった僕は右手に持つ手紙の存在(それにウサギのぬいぐるみ)など忘れてしまい、暫しの間__緑色の芝生の上を走り回った。
何とか、白い犬からスノードロップの花を取り返せた僕だったけれども全力で走ったせいでハアハアと息を切らせてしまい、仕方なく昔のエディのようにチョコレート色のベンチに座った。
隣にいる郵便屋のおにいさんは、まるで僕の存在など気にしていないかのように自分が読んでいる絵本に無中みたいだ。
「…………」
僕は、再び手紙を開けるとその中身を確認することにした。手紙だから、てっきりミミズみたいな達筆な文字がビッシリと綴られていると思ったのだけれども、予想に反して幼児が描いたみたいなクレヨンの絵が描かれた何枚かの紙が出てきたものだから僕は目を丸くしてしまう。
徐々に、そのクレヨンの絵が空中に浮かび上がり僕の目の前をぐるぐるとメリーゴーランドみたいに回るような動きをしてきたのだから、その驚きは相当なもので思わずベンチから飛びはねてしまいそうになったのだった。
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