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★団長【R】が奇妙なサーカスの《真実》を届けにくるよ★

「あっ…………」 僕の目の前に浮かび上がり、グルグルと目まぐるしい動きで翻弄してくるクレヨンで描かれたような頭に赤いリボンのついた女の子、それにウサギみたいな白い犬、パパそっくりなスーツを着ている男の人の絵は暫くすると少し離れた場所に移動してから新たな動きを見せる。 手に猟銃を持ったパパそっくりなスーツ姿の男が、頭にリボンのついた女の子と遊ぶ白い犬を抱きかかえつつ穏やかに笑う___。 女の子は最初は驚きの表情を見せたけれども、すぐにパパそっくりなスーツ姿の男の人と楽しげに笑い合う。猟銃は、女の子からは見えていない。二人から少し離れた場所には赤い血を流す鳥がグッタリと倒れているというのに。 すっかり仲良くなった二人(と一匹)は公園から出て行くとある場所へ向かう。木々の間から日が差し込む森の中____。 いつもなら鳥の囀りが聞こえてくる森。しかし、その日に限っては木の葉か擦れ合う音しか聞こえないくらいに静寂に包まれた森へとパパそっくりなスーツ姿の男は女の子の細い腕を掴みながら引き連れていく。 ウサギみたいな白い犬は、とてもいいこで吠えなかったものだから周りにいた老若男女達も全く気づかない。 そして、その森の中でパパそっくりなスーツ姿の男は__赦されざる【罪】を犯したのだ。 今なら、つい先程の箱みたいな四角い部屋で【手術台の上に横たわった耳にリボンがついたウサギのぬいぐるみ】の股の部分が引き裂かれ、尚且つ綿が出ていた理由がよく分かる。 穏やかな笑みを浮かべながら赤いリボンをつけた黒髪の女の子に忍び寄ったスーツ姿の男は、やっぱりパパで__しかも、息子の僕にですら【姿】を隠していた、かつてのパパなのだ。 立体的に浮かび上がったクレヨンで描かれた【かつてのパパ】が【赤いリボンを頭につけた黒髪の女の子】を押し倒してから、ベッドの上で生まれたままの姿の彼女の体に乗っかりながら腰を激しく上下に動かす光景を目の当たりにして、かつての【天使みたいに可愛い僕の姿】と【パパを追い詰めようと身を犠牲にしてまで心を押し殺したエディ】の姿を思い出して凄まじい吐き気が込み上げてきた。 その直後、またしても異変が起きる。 【これが……キミのパパが犯した罪___赦されない罪だ。その結果、一人の哀れな少女がどうなったのか……その目を見開いて受け入れろ……これは、紛れもない――真実だからね】 白い犬が、真ん丸いつぶらな瞳を僕の方へ向け、見ようによっては笑っているかのような表情を浮かべながら低い声で言い放つ。可愛らしいクレヨンで描かれた姿と、その声の低さにギャップを感じてしまい恐怖を抱いた僕は思わず二、三歩後退ってしまう。 《犬がヒトの言葉を話す》という、現実では絶対にあり得ない現象よりも、その言葉の内容に恐怖と奇妙さを抱いた僕。そして、もっと、もっと――この白い犬から離れないといけないという警告のような感覚に襲われて後退りし続けたものの壁にドンッとぶつかったせいで阻まれてしまった。 そこで、ようやく周りの風景を確認した僕だったけれども此処がどこなのか分からない。 強いて言うなら、何処かの建物の中だということは分かるけれども、僕の記憶の中に壁中に【動物の毛皮】が勲章のように飾られている建物という存在は無かったため戸惑いの目をそちらへと向けるしか出来ない。 【戸惑っているね、天使みたいに可愛いアレン……此処は、お前のパパ__クロフォードが巧妙に隠していた秘密の地下室の内部さ。もちろん、本物ではないけれどね。本物は既にマモルが火を付けて消し去った。お前のパパを退治した後でね。どうだい、マモル……そろそろお前の口から……事件の真相を告げたらどうかな?赤ずきんの絵本が大好きだった……ミユキのためにも……さ____】 「ああ、そうだね……ラビット。それじゃあ、ここじゃない場所__ええと、エディが秘密の場所だと言ってた……あの小さな観覧車の遊具に移動しようか。その方が、ここで真相を話すよりも――エディが喜ぶだろうからね。さあ、アレン……一緒に地獄に誘う遊具の方に行こうか?」 その白い犬の言葉を聞くなり、パタンッと絵本を閉じた郵便屋のおにいさん(本名はマモル)の、獲物を狙う肉食獣のような鋭い瞳が僕へとまっすぐに注がれるのだった。

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