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episode.1-5

「え、え?」 「差し上げます」 漸く青が点灯した。 発進する車を他所に、萱島は唐突な展開に目を白黒させていた。 「た、誕プレ?…ありがとう」 「いえ、まさか。誕生日はもっとマトモな物を用意します」 何だそれ。 中途半端な姿勢のまま、萱島は口を噤んだ。 自身の手首に光る紫色を見詰める。何だそれ。 微かな熱が残る。 そんな物が気にならない程に、顔が火照り始めた。 逃げる様に窓へと向きを変えた。 真冬の乾いた景色が、枠の後ろへと流れていった。 目的地には直ぐに到着した。 開発が進み巨大なショッピングモールと、まるでテーマパークの如き娯楽施設が並ぶ。 週末という時期もあり人足も多く、萱島は車窓から瞳を輝かせて眺めた。 目に痛い程の極彩色から一転、地下駐車場に沈むまで。 「びっくりした…こんなデカい施設人間に作れるんだな」 かの有名な夢の国にでも連れて行けば、卒倒するかもしれない。 「初めて来たんですか?」 「そう。都内の雀荘なら知り尽くしてるぞ、今度案内してやろうか」 「良いですね」 外を見詰める大きな瞳。 其処に一帯の建物が映り込み、万華鏡の如く色を変えた。 萱島には知らない世界が沢山あった。 一般的な人間が凡そ出掛ける様な場所を、彼は経験していなかった。 車を停め、2人は薄暗い空間を歩いた。 目指すは最上階の映画館、漸くあのちっぽけな約束が実現するのだ。 「あっ…そうだ戸和、売店寄ろう」 「…構いませんが、また甘い物ばかり買い込まないで下さいよ」 戸和は隣の上司の腕を捕まえ、自然に歩道側へ追いやった。 その行為を見咎め、萱島は非常に不服そうな面をする。

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