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episode.1-15

「イラクに滞在していた頃、寝屋川隊長に会った事も」 「凄い話だな」 「あの人が覚えてるかは知りませんが」 良く分からないが、青年の年不相応な落ち着きには納得がいった。 話している間にもカラフルと言うよりは、どちらかと言えば深い色味の煮込みがテーブルへと並ぶ。 萱島はやはり終始楽しそうだった。 多種多様なタパスに、単に魅せられていたのかもしれないが。 目前にし、改めて観察し。 戸和はこの上司の周囲に人が集まる訳を知った。 「萱島さんは」 「ん?」 ロブスターの尻尾をつついていた萱島が顔を上げた。 「本当に楽しそうに笑いますね」 「…そう?」 居心地が悪そうに、相手は視線を泳がせる。 本人は意図しているのか知らないが、確かにいつも場を明るくする人間だった。 「うちの会社は貴方が着任してから、見違えるほど会話が増えましたよ」 「お前は言った通り保育士になったけどな」 部下が初対面の日に零した苦言を、萱島はしっかり覚えていた。 そうして何食わぬ顔で片手を上げ、ウェイターを呼び出しては追加を乞うた。 ショッピングモールを散策して、萱島は宣言通り悪趣味な土産を選び、2人は人工川を跨ぐ簡素な橋を過ぎた。 見上げるや橙と、紫と、その他諸々の色をかき混ぜたパレットの様な夕焼けが広がっていた。 その極彩色もやがて、西の方向へと闇に押されて吸い込まれていく。 同時に2月の肌寒い外気が、一層冷たさを増して身に堪えた。 「…っくしゅ」 ついくしゃみをした。 予想以上の速度で振り向かれ、案の定怒られた。

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