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episode.2-11

「貴方は大丈夫なんですか」 またタイプ音が止まる。 何が、と思考を巡らせて あ、食事の事か。と納得してどうにか頷いた。 椅子を引いて青年が座った。 PCの電源を入れて、それから何をするでもなく。 背凭れに身を預けてじっとしていた。 …視線が。 萱島の背筋を、妙な汗が伝った。 さきから視線が、痛いほど自分を刺している。 起動まで手持ち無沙汰なのだろうが、それにしても。 スクロールで流れる文章がすり抜けて行く。 「手伝いましょうか」 また沈黙を裂いたのは戸和だった。 退勤を切り直させるのもどうかと思ったが。 「あ…じゃあ、すみません…お願いします」 このまま手持無沙汰では、場が持つ気がしない。 言うや否やメーラーを開き、萱島は新規作成に添付をつける。 「あと最終チェックだけなんですけど、3件ほど」 「それで終わりですか?」 「牧が帰って来たら研修の話して終わり」 早く帰って来れば良いのに。 話をしようと言う部下の手前、萱島は無責任な考えを抱いた。 然れど先程出て行ったばかりだ。 しかも凄まじく時間をかけようが、15分と作業に要する気がしない。 しまった。何故手伝いまで頼んで寿命を縮めたというのか。 案の定、数回長針が回った頃には作業の音は途絶え、部下に問題無い旨の報告をされ、再び彼の視線に晒されていた。 萱島は往生際悪く、抵抗の様に画面に齧り付く。 多分何もしていない事など、とうにバレている。 (今日昼15しかとってないから…1時間行ったよな、そりゃ行くわな) 今頃部下達は深夜のファミレスで楽しく、同年代の下らない盛り上がりでも見せているに違いない。 わあ羨ましい。 ワープ転移したい気持ちに駆られつつ、無意味にシフトキーを連打した。

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