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「…ど、どの辺が?」 「分かんないけど、俺海ってあんま綺麗だと思った事なくてさ」 でもこれは何か、ずっと見てたい。 恥ずかしげもなくそんな台詞を発する萱島に、青年の顔がみるみる熱を持った。 「あ…」 煙草を吸い方も忘れた様に、どうして良いか分からず弄ぶ。 「ありがとう、ございます」 声が詰まった。 そう、誰にも理解して貰えなかったが。 海が綺麗だと思って、描いた絵なのだ。 「これ欲しいな…あ、お金払ったらくれる?」 「お、お金なんて…!全然…その、こんなの貰ってくれるんなら、それだけで…」 寧ろ自分は先程、煙草を奢られたばかりだ。 無論躊躇う気持ちもあったが。IDを聞いて、画像を添付して送った。 彼は此方が辟易するくらい嬉しそうだった。 待受にしようなどと笑って、本当にするものだから、小林は必死に気を紛らわそうと煙を吸った。 「もっと描いてよ小林くん」 携帯を飽きもせず眺める。 初めてじっくりと、その横顔を観察した。 顔小さいな。 目が大きい、虹彩がとても美しい。 あれは何色だろうか。イエローオーカーが混じった様な、いやもっと儚い。 (あれ、もしかしなくとも) この人めちゃくちゃ可愛くないか。 コーヒー缶を口元に寄せ、傾ける。 ふっくらと色付いた唇が濡れる。 とても柔らかそうで、無意識に喉が鳴る。 キスしたい。 ティーンの様な衝動が押し寄せ、ボックスを握り締めた。 吸わぬまま煙草がじりじりと灰になる。 「あ」 突然、彼は声を上げた。 思わずびくりと肩を揺らす。 その視線の先を追うと、駐車場の向こうから男の2人連れが歩いて来た。 ジャージにトレーナーという恐ろしくラフな格好と、どう見ても水商売風の格好。 珍妙な組み合わせに小林は眉を寄せた。 しかも、片方は知人だった。

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