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extra.1-5
「――…小林くん!」
案の定、気付いた知人の方が駆けて来た。
満面の笑みで手を振る。
彼の名は牧。
素性は知らないが…稀にジャージで夜間に現れては、一番くじの景品確保を懇願するはた迷惑な常連だった。
「小林くん、小林くんじゃないか!」
「何、何だよ…」
距離を詰めるや小林の肩を掴んで揺さぶる。
隣の萱島は呆気に取られて眺めていた。
「君は俺の希望だ…無情な確率の世界に舞い降りし神だ」
「ラストワン賞は未だ暫く出ねえぞ」
「残り1万以内に入ったら連絡してくれ、何があろうと駆けつけるから」
「良いけど…あの兄さん、お前の友達?」
奥のチャラチャラした彼を指す。
牧はきょとんとした。
「いや?同僚だけど」
「ど…え、嘘だろ、お前働いてんの?」
驚愕する小林に場が止まる。
そして次の瞬間、萱島と“チャラチャラした彼”が腹を押さえて爆笑し始めた。
「あははははは!牧、お前…店員にニートだと思われてんぞ!」
「おい冗談じゃないですよ、働いてますからちゃんと!」
「わ、悪い…だって深夜に突っかけでアニメ誌買いに来られたら…っていうかえ、あれ…?知り合いですか?」
動揺と戸惑いに吃る。
牧は(表情こそ見えないが)不服そうに口を尖らせ、説明を寄越した。
「俺の上司と、こっちは同僚の間宮」
同じ会社かよ。
青年は呆気に取られた。
しかし、どう見ても隣の彼はサラリーマンには思えない。
世の一般的な企業で、果たして柄シャツにピアスをした男がやっていけるというのか。
「もしかして夜勤の時たまに来る人らも同僚?」
「分からん、どんな奴?」
「何か…やたら馴れ馴れしいギター背負った人と、やたらそわそわしながらエロ本買いに来る眼鏡の人」
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