42 / 203

extra.1-5

「――…小林くん!」 案の定、気付いた知人の方が駆けて来た。 満面の笑みで手を振る。 彼の名は牧。 素性は知らないが…稀にジャージで夜間に現れては、一番くじの景品確保を懇願するはた迷惑な常連だった。 「小林くん、小林くんじゃないか!」 「何、何だよ…」 距離を詰めるや小林の肩を掴んで揺さぶる。 隣の萱島は呆気に取られて眺めていた。 「君は俺の希望だ…無情な確率の世界に舞い降りし神だ」 「ラストワン賞は未だ暫く出ねえぞ」 「残り1万以内に入ったら連絡してくれ、何があろうと駆けつけるから」 「良いけど…あの兄さん、お前の友達?」 奥のチャラチャラした彼を指す。 牧はきょとんとした。 「いや?同僚だけど」 「ど…え、嘘だろ、お前働いてんの?」 驚愕する小林に場が止まる。 そして次の瞬間、萱島と“チャラチャラした彼”が腹を押さえて爆笑し始めた。 「あははははは!牧、お前…店員にニートだと思われてんぞ!」 「おい冗談じゃないですよ、働いてますからちゃんと!」 「わ、悪い…だって深夜に突っかけでアニメ誌買いに来られたら…っていうかえ、あれ…?知り合いですか?」 動揺と戸惑いに吃る。 牧は(表情こそ見えないが)不服そうに口を尖らせ、説明を寄越した。 「俺の上司と、こっちは同僚の間宮」 同じ会社かよ。 青年は呆気に取られた。 しかし、どう見ても隣の彼はサラリーマンには思えない。 世の一般的な企業で、果たして柄シャツにピアスをした男がやっていけるというのか。 「もしかして夜勤の時たまに来る人らも同僚?」 「分からん、どんな奴?」 「何か…やたら馴れ馴れしいギター背負った人と、やたらそわそわしながらエロ本買いに来る眼鏡の人」

ともだちにシェアしよう!