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episode.3-6

千葉が結局副社長で纏めた。 理解はしたが。 「本郷さんを悪く言うなよ」 「あーあ世知辛い、オーディション受かったらさっさと辞めたるわこんな会社」 欠伸をしつつ此方を追い抜かし、千葉は怠そうにメインルームへと去って行く。 別に萱島とて女性を欲してる訳ではないが、正直なところチョコレートが食べたかった。 というか単にチョコレートが食べたかった。 つい聞き分け悪く、口を尖らせる。 「間宮、チョコ」 「俺はチョコじゃないですよ」 「チョコ食べたい」 「知らんわ」 間宮にしてみれば、寧ろそっちが寄越せと言いたかった。 そもそもセント・バレンタインデーとは、決してカカオ収穫祭でもチョコレート記念日でもない。 世界各地で男女の愛の誓いの日とされ、通説によればもとは聖ウァレンティヌスの処刑に由来する。 その神聖なる記念日に、単に日本のメーカーが販売戦略から便乗しただけだ。 等と言った所でこのでっかい子供には何の意味もないだろうが。 「主任がくれたら来月3倍で返してあげますよ」 「本気か間宮…ん?ちょっと待てよ。あの縛りが同性でも有効なら、全員俺がメ◯ーチョコあげたらリ◯ツ返してくれるって事だよな?そうだよな?」 「この、クソビッチが…」 一生砂糖食って生きてろ。 純情を踏み躙られ、間宮は眉を寄せて舌打ちをした。 それにしても。 蓋を開ければ、本部の職員でバレンタインなどとリア充なイベントに関与出来る人間は、本当に極少数に限られている。 友人の多い千葉と間宮。 2つの次元に彼女を有する牧。 そして。 「萱島さん、情報共有システムのレジュメ何処やったんですか」 「俺の机の何処か」 「捜して下さい」 「…はい」 本人自体の興味のほどは知れないが。 どう考えてもモテるであろう、現・大学生の副主任、戸和だけだった。

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