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episode.3-11
「…My boss, sir.
(上司です)」
手を後ろに組み、答える。
ヘーゼルの瞳が忙しなく動く。
其処には敬愛の念と、怯えが潜んでいた。
「Do you look daggers at the boss?
(お前は上司にガンを付けるのか)」
「No, sir. Sorry, sir.
(そんな、申し訳ありません)」
ロゼが乾いた唇を舐めた。
喉仏が上下する。
「Know your place.
(立場を弁えろ)」
掠れた低音がそれだけ告げた。
目で釘を刺して相手の胸元を叩き、寝屋川は早々とその場を後にした。
「…悪く思うな萱島、アイツらは端から噛みつかねえと残飯も食えなかったんだ。ガキの悪癖ってのは、犬の糞より厄介だ。てめえなら良く分かると思うが」
独特の流れる様な、淡々と静かな口調は、萱島をも内省させた。
自分こそ、彼らを理解しようとする気が足りなかったのだ。
ロビーを背後に、階段の手前に差し掛かる。
そこで萱島は後になっても…何故そんな事を聞いたのか分からない、微塵も関係のない問いを上司へ零していた。
「寝屋川隊長は、その…」
その場に歩を止める。
「社内恋愛についてどう思いますか」
当然の結果、空気が凍った。
幾らなんでも脈絡が無さ過ぎた。
いつも険しい目を見開く、相手にそんな珍しい表情をさせる程に。
「…随分唐突な野郎だな」
「ええ…仰る通り…」
忘れて下さいと続けようとした所で、己を観察する目に気付いた。
「ああ」
居心地悪くその視線にたじろぐ。
矢先、上司はふと思い当たった様に述べた。
「戸和か」
唖然とした。
一体何を見てその正解を導き出したというのか。
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