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episode.3-13

*** 時の経つのは早い。 気付けば日付を跨ぎ、締め作業を終え、萱島は釣られる儘に部下のマンションへやって来ていた。 「…でかい」 頭の天辺まで見渡せぬ、(これはあくまでも萱島の基準であるが)ロケーションも良好な高層マンションに脚が竦む。 何処から見ようが学生が住まう場所ではない。 ただ、てっきり分譲かと思えば賃貸らしい。 曰く教授の紹介で引き下げてもらったそうだが。 なんせ給料が二重で発生していた彼の事だ。 そう、明らかに自分より稼いでいるであろう彼の事だ。 「置いて行きますよ」 エントランスから声が掛かった。 生返事をして歩を進める。 金銭感覚が麻痺している、というわけでもなさそうなのだ。 締める所は締めている。 「…俺も1人暮らししようかな」 エレベーターの壁に肩を預け、呟いた。 「その方が良いんじゃないですか」 「だよな、いつまでも社長におんぶに抱っこってのも…いい年して時折ほんと、死にたくなるんですよ」 おんぶに抱っこ、という表現に反応したのか。 戸和が相手に視線を落とした。 「家賃だろ、光熱費と、通信費、食費…寧ろ生活費、全部俺は払ってない」 「…生活費まで貰ってるんですか?」 当然の呆れだった。 萱島は申し訳なさそうに、つらつらと事の真相を述べた。 「それが、その…あの人例の黒い…魔法のカードを持ってるから、欲しいって言ったら何か気軽にくれたんですよ…家族カードみたいなの、作ってくれて」 「……」 社長は社長で万物に頓着が無さ過ぎる。 というかその立ち位置は、完全にヒモだ。 「…分かってる、分かってるから皆まで言うな。俺もそろそろ不動産屋行くから、カードは返さんけど」 「それが1番問題だと思いますが」 「あれなんか飛行機とか買えるらしいな、1回買ってみようかな…」 社長の反応がみたいだけで、そんな物必要無かったが。

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