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episode.3-21

「ずっと、好きでした」 シャツを掴んだまま まるで初心な少女の様な台詞を吐いた。 「…最初に会った時から、多分、今までずっと好きでした」 微塵も疑う隙が無かった。 それくらい、身を削る様に萱島は絞り出した。 「本当にどうしようもない…いっつも怒られてばっかりで、こんな…駄目な、馬鹿な人間ですが」 頭が下がり、再び床を向く。 「俺と付き合って下さい」 相手の告白に、了承で済んだ事を。 何故か改めて、また萱島は自ら言い直した。 誰かに愛を告げるのが、こんなに苦しいと思わなかった。 こんなに持ち得る全ての気力を使って、何も残らず空っぽになる程 しんどい事だなどと、知らなかった。 「…勿論」 そしてたった今空っぽになった自分が、相手の声ひとつで瞬く間に満たされる。 また溢れ出しそうになり、心臓の付近をぎゅっと握り締めていた。 「顔上げて」 優しく大きな手が触れる。 「目を閉じて」 なんて柔らかい声を出すのだろう。 擽る様に頬を撫でる手に、される事を分かっていながら萱島は目を瞑った。 時間にして、ほんの僅かだったと思う。 肩を抱き寄せられ、唇が触れた。 温かい。 静かな明けない午前の部屋で 重ねるだけの、初めてのキスをした。 「……」 ゆっくりと離れる。 ようやっと視線を上げる大きな瞳に青年が映り込んでいる。 急に恥ずかしくなって、萱島の頬が染まった。 感触がいつまでも触れた箇所へと残っていた。

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