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episode.3-23
「待つって、どのくらい」
「……」
そんな具体的な期間を尋ねられても、困る話材だった。
「分かりましたよ」
そう、結局は妥協せざるを得ない。
でかい子供なのだから。
眉尻を下げ、萱島は困惑した。
今日の彼は怖いのか優しいのか分からなかった。
「1週間くらいなら、まあ」
「短っ…セミか…」
「泊まって行くでしょう、先にシャワー使って下さい」
そうして頭を撫でられた。
この状況で泊まって良いものか、さしもの萱島も悩んだが。
今日の所はもう、彼を信じる事にしよう。
というより緊張と安堵を繰り返し、疲労から眠気が凄まじかった。
「適当な服借りていい?」
「どうぞ」
「あ、下着どうしよ…まあノーパ…」
隣から尋常でない殺気を感じた。
「…じゃなくて買ってきまーす」
「萱島さん、いい加減にしないと本当に喚こうが無視して突っ込みますよ」
「ええ…」
やり兼ねない。
青褪めて財布を取りに、萱島は逃げた。
戸和はその後ろ姿を嘆息して眺める。
結果として一時の恐怖を与えただけで、どうせ萱島という男は…間際まで獣の牙にも爪にも気付けぬ、間抜けな赤頭巾に等しいのだ。
深夜に1人出掛けようとする腕を捕まえ、ついでに寒そうな肩に上着を掛けた。
「あ、何…付いてきてくれんの、ありがと」
追って外に出る青年に、大きな目が瞬く。
真冬の闇に白く浮かぶ手を握った。
赤い顔で何か言いたげにして、結局相手は黙った。
(首輪が欲しい)
事実だけでは意味が無い。
2日で消える痕では意味が無い。
やっと自分の物になって、
毛程も他人に触らせたくはなかった。
いつになく大人しい上司を他所に。
繋いだ手を引いて夜のコンビニを目指す傍ら、戸和は枷の形状を模索した。
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