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episode.5-2
3、人間関係
これは…。
萱島はテーブルの上に並べられた間取りを物色しつつ、最近の気不味さへ一人苦悩した。
同居している副社長の本郷から、ある時を経て何か…そういった独特の熱を感じる様になり、滑稽なほど狼狽していた。
別に彼が明確な好意を抱いているのか、それだけが問題ではない。
萱島自身が、気を抜けばうっかり絆されそうで怖いのだ。
(そりゃそうだろう、本郷さんだぞ本郷さん)
両手を束(つか)ねて唸る。
あの非の打ち所もない、格好いい男に優しくされて平然と振る舞え等と…。
いつも其処まで考え、自責の念に駆られた。
自分が好きなのは戸和だ。
分かっている。優柔不断な性格がいけない。
要はそれら諸々の負の感情から、萱島は仕事の合間を縫って不動産屋を訪れたのだった。
「…ね、本当。どう思います隊長」
「As you wish」
傍らの男は素気無く、欠伸混じりに言った。
何処へ向かうかも定かでない車中、同行した寝屋川は早々にシートに身を預け眠ってしまう。
萱島は無言で前を見やった。
前方では依頼主とその部下が、運転の傍らぼそぼそと不穏な話を続けていた。
さて、あの不動産会社から戻ったのち、萱島は珍しく本部に来た社長直々に仕事を任されていた。
どうも金額のでかい件らしい。
訝しげに内容を耳にしていた萱島も、隣の依頼主を紹介され思わず身を竦ませた。
何と其処に居たのは日本経済の屋台骨である自動車産業…中でも更にトップシェアを誇るスワロフ社の取締役だったのだ。
彼は神妙な顔で率先して名刺を差し出すや、年下の自分へ深々と頭を下げてきた。
(…どんな“ツテ”だ本当)
メディアでも滅多にお目にかかれない存在が、同じ車で行き先を共にしていた。
辟易する此方を他所に、隣の上司はどんな状況下だろうがお構いなしだ。
隙間があれば何処でも2分で眠りに落ちる。
軍人の技なのだろうが、羨ましい限りだ。
一人暇を持て余した萱島は、単調な景色を頬杖を突いて眺めていた。
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