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episode.5-5
「何か来たぞ」
「…はい?」
理解の追いつかぬ鳩部が固まる。
金髪を億劫そうに掻き毟り、寝屋川が詳細を加えた。
「車が4…否5台。1台はHMMWV か?表だ」
相も変わらず眠そうな声に場が止まった。
言われて耳を澄ませれば確かに、僅かながらエンジン音が底を這っている。
「何故そのような事がお分かりに…?」
鳩部の方は訳も分からず、困惑していた。
惑う彼の携帯が音を立てる。
急いで着信元を認めた表情が陰った。
緊張した面持ちで一言断るや、通話キーを押すなり噛み付いた。
「…何の用だ?」
『兄貴、見つけたんだな』
動揺が走る。
一体、その話を何処から。
「お前に兄貴と呼ばれる筋はない!」
『寄越して貰おうか。計上の合わない額は数百億に上るそうだな、態々取りに来てやった』
「…話が見えんぞ」
『そうかい、残念だ』
含み笑いが鳩部の片眉を吊り上げる。
「――は、鳩部様!」
話の最中、血相を変えて警備員が螺旋階段を駆け上ってきた。
何だ何だ。一転して不穏な空気に萱島は後退る。
「侵入者です…いえ、お逃げ下さい!いきなりゲートを壊して軍用車が敷地に、突っ込んで来ました!」
「ぐ、軍用車…?まさか…」
『兄貴、今そっちに向かってるぜ』
電話の相手が更に下卑た声を寄越した。
「待て、貴様…どういうつもりで!」
そこで回線は無情に切れる。
無用になった携帯を放り出し、鳩部は何やら頭を抱えて唸り始めた。
警備員と付きの者はおろおろと狼狽えている。
一気に混乱した現場を他所に、寝屋川はまたも欠伸を漏らした。
「…どちら様で?」
「私の弟です…!いえ勘当された人間に、その様な呼称使いたくもない。何処へ行ったとも知れませんでしたがまったく、こんな時ばかりしゃしゃり出て来て…!」
「鳩部様、そんな事より早く裏口から!」
「黙れっ!私に指図するな!」
「隊長、何か面倒な事になってきましたけど」
ぼそりと隣の上司に零す。
彼は一寸萱島を見た後、何食わぬ顔で告げた。
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