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episode.5-14
「数が多い…!」
苛々とローテーブルを蹴り飛ばし、向こうの体勢を崩す。
その上に乗り上げ一撃をお見舞いしたが、直ぐに新たな弾が飛来した。
一度脇へと身を隠し、萱島はふとR5を視線の延長上に掲げる。
「…曲がっとる」
銃身で馬鹿みたいに殴ったお陰で、可哀想にフレームが少々イカれてしまった。
「隊長!これ弾出ないんですけどこれ、どうしたら良いんですか!」
『セレクターを回せ』
「何ですかそれ!」
『グリップの上にあるだろ』
確認すると確かに安全装置が掛かっていた。
レバーを修正し、改めて敵へと照準を合わせる。
トリガーを引けば反動を感じた。
そうして目前の男のエモノが、景気よく吹っ飛んでいた。
「…撃てた」
存外に感触も軽い。
思わずまじまじとR5を見詰める萱島を他所に、てっきり弾切れかと踏んでいた敵は竦み上がる。
「ふふん…撃てたらこっちのもんだコンチクショウ」
何故態々初めからハンデを負っていたのか。
『合流するぞ萱島、一旦左側面の客間に入る』
「あ、はい」
玄関前の軍用車が鬱陶しい。
機銃は無力化したが、あの盾に篭もられては迂闊に近づけない。
硝子も防弾か。
眉間に皺を寄せていると、不意にその隙間を縫って人影が現れた。
(…は?)
虚を突かれて固まる。
逆光で面は見えないが、何者かがまるで我が家へ帰宅するように歩いてくる。
軍用車両を物ともしないその姿が異質で、
余りに超然と景色から浮き出していて。
全身の毛を逆立て、萱島は反射的に銃を構える。
ところがトリガーを引こうとした寸前、俄かに横からの衝撃で地面へ突っ込んでいた。
「ぎゃふん」
「待て萱島、撃つな」
それを先に言うべきだ。
追い付いた寝屋川の一撃を受け、可哀想な部下はそのまま動かなくなる。
「寝屋川くん?」
其処へ矢張り、知った声が飛んできた。
逆光に立つ白衣を見やり、寝屋川は訝し気に目を眇めた。
御坂康祐。
神崎の古い知人らしく、寝屋川とてそれ以上の情報は知り得ない。
いつもの護衛は勿論健在で、背後から夥しい殺気が押し寄せている。
彼の通った階段には、無残な屍が転々と転がっていた。
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