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episode.5-21

せっかくの素晴らしい中庭が。 死体搬送に走り回る業者と、ヘリの爆音に台無しだった。 出張で久々の森林浴を目論んでいた御坂は、1人息を吐く。 背後にはこれまでの不平不満を丁寧に余さずのっけた顔をして、狙撃手のチームリーダーが近づいていた。 「本部の者が来ます、報告は?」 「別に何も。言われた通り“すべてに良く円く”だよ」 明後日の方向を見て進む男に、狙撃手は不快な色まで加えた。 「円くだと…?貴方が考えなしに突っ込むから、要らん業者を呼ぶ羽目になったのに」 「殺したのは君じゃない」 「ふざけるな、原因を作ったのは其方です」 「感謝しなよ、お陰で市場経済が回ったんだから」 苦虫を噛み潰した様な表情で肩を震わせる。狙撃手は今日三度目の舌打ちをした。 「そもそも君の上が債権の回収もマトモに出来ないから、嫌いな僕とデートになったんじゃない」 其処を突かれると最早、何も返せない。 唇を引き結ぶ相手から興味を失くし、御坂は早々に車へと乗り込んだ。 「…ほんと役人が聞いて呆れるよね。軍人とヤクザ上がりの方がよっぽど有能だと思わない?」 後部席で長い足を組む。 薄いレンズの奥へ本来の牙が垣間見え、運転手は車内へ立ち込める不穏に青ざめた。 押し黙る相手へ特に言及もせず、御坂は深くシートに身を預けた。 眼前には荘厳な館。 山間を切り開いた絶景。 其処へ間抜けにぽっかりと口を開けた玄関を認め、思わず小さな笑いが漏れる。 確か、著名なデザイナーが仕立てた一級品だと生前、鼻高々に自慢された覚えがあったが。 「呆気ない物だな、いつの時代も」 まるで幾つもの世紀を跨いできたかの様な口ぶりで言った。 運転手がまた、手の置き場も分からず身動ぎをした。 携帯が喧しく鳴り響いていた。 どうせ報告の催促だろう。 それだけは褒め称えても良い、細部まで手入れの行き届いた庭を眺め、御坂は徐に白衣の懐を探った。 摘み出した貴石が、陽を撥ねて光る。 本当に箱の中に入っていた物。 即ち、赤々と燃えるピジョン・ブラッドが御坂の手中で輝いていた。 next >> episode.6

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