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extra.3-2
「あ、日滝さんも来ます?ライブ」
「は、へ?」
先輩ははっきり申し上げてコミュ障だ。
いきなり見知らぬ人間に話をふられ、思考停止していた。
「じゃあ2名様と…あ、当日はドリンク代だけで大丈夫なんで」
「いや、え、へ?」
おいおいこの堅物と見に行くのかよ。
異論を唱え掛けるも、彼は携帯で察するに2席分の確定を何処かに飛ばしてしまった。
「あ」
不意に彼が声をあげた。
視線は自動ドアの外を向いていた。
「主任」
まさか。作業の手が止まる。
ほぼ同時に扉を割り、今度は見知った容貌が現れた。
「…千葉!お早う、元気?」
「もりもりっすわ」
「わーい。あ、小林君と日滝さんもおはよ」
一気に店内が明るくなった。
単なる俺の主観だろうが。
いつも通り目をきらきらさせた萱島さんが、此方に気付いて微笑んだ。
「煙草の97番下さい」
「…あ、はいっ」
見蕩れて反応が遅れる。
慌てて背後のラックへ手を伸ばす。
そこでふと違和感に動きが鈍る。
確か煙草は吸わない筈では。つまり、誰かの使いだろうか。
「絵、新しいの描いた?」
手前の自分にしか聞こえない声量だった。
内緒話の如き距離感へ、青年の返事が上擦る。
「い、一応…」
「ほんと?また見せて」
先とはまた異なる、毛程も屈託のない笑顔があった。
情けない事に頷くので精一杯だ。
お釣りを渡す手すら、緊張で挙動が怪しい。
「萱島さんは俺のライブ来ますよね?」
「お前の?行くよ、せっかくでかいとこ借りれたんだから」
「そうそう、箱だけど800ぐらい入るんで」
2人の会話を耳にし、思わず改めて手中のチケットを見詰めた。
萱島さんも来るのか。なんと。しかし、会社の誰かしらと居るのだろうし。
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