115 / 203
episode.6-2
「や、やめて」
ぷつり。
至極簡単に留め具が外された。
そのまま下段へと伸びる。
例え目を逸らそうが、感触に頭の中がぐちゃぐちゃになった。
肩が震える。
懸命に逃れようと力を込めた。
「こっち向いて」
砂糖を多分に乗せた声が落ちてきた。
地面を睨みつけ、萱島は無言で抵抗を示した。
外気に晒された鎖骨が粟立つ。
まるで温める様に、戸和の手が触れた。
「っ、あ」
止めて。
じゃないと頭が変になる。
明らかに性的な目的で指先が下へと辿り、視界が真っ赤に染まる。
また懇願した。
これから始まるであろう事を想像するだけで、すべてが堪らなくて、視界がぼやけた。
「ね、戸和…や、やだ」
回された腕を外そうと握った。
ちっとも動かなかった。
「ねえ、やめよ」
蚊の鳴くような声が落ちた。
強い力に身が竦む。
否応無く、身体は覚えている。
あの男のお陰で、萱島にとってのそういった行為はどうしたって恐怖も伴った。
「え、あ…っや、う」
突然、強烈な痺れが背筋を突き抜けた。
がくんと虚脱してシンクの縁にしがみつく。
一寸何が起きたのかと身体に視線を巡らせた所で、相手の手が胸の柔らかい箇所を触っているのに気付いた。
「ん、ふうっ…あ」
かあっと頬に赤みが刺す。
全身が耐え難い熱を帯びる。
其処にしか逃げ場がないように、萱島は冷たい縁に縋った。
やめてはくれなかった。
戸和の指は、背後から容赦なく敏感な部分を弄った。
「や、あぅ、ん」
シャツの隙間から熱い掌がじっとりと撫でる。
それだけで崩れ落ちる身体を、無理矢理抱き寄せて引き上げた。
「…っめ、て」
「立てないの」
「あ、さわんな、でっ」
「ベッド行きましょうか」
「い、いやだ」
何の苦もなく抱き上げる相手のシャツを引っ張った。
そっちの方向は寝室だ。
往生際悪く、けれど当人は防衛本能から必死に抗っていた。
ともだちにシェアしよう!