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episode.6-4

「俺は貴方が思ってるほど、出来た人間じゃない」 綺麗な瞳だと思っていた。 黒曜石に似ていた。其処に自分だけが映っていた。 仕事に置いても私生活に置いても、何処に立っていようが初対面から現在に至るまで、一糸も乱れず隙間なく令令とした 彼とは思えない熱い指先が、ゆっくりと脇腹を撫で上げる。 「、ん」 震える。 背筋を何かが這い上がる。 薄いシャツを通して感じる、掌の温度が此方に伝染する。 「…め、だよ」 「どうして」 「や、ふっ…」 身を屈めた戸和が、首筋に噛み付いた。 濡れた感触に目の前がちかちかした。 肌を食まれ首筋をなぞる。 萱島は懸命に自分の口を塞いだ。 漏れてしまう。 この静寂で隠しようもなくて、とても慙愧に堪えない。 「ひぅ、んん」 「手退けて」 頭を振った。 「沙南」 聞き分けの悪い幼子を諭す如く、聞いた事も無い程優しい声が降って来た。 右手ははその間も胸を這う。 再び衣類越しに突起を引っ掻いた。 「っん、あ…ふ」 「何も怖い事なんかしない」 耳元に甘さが流し込まれる。 身体を強張らせ、萱島の目尻から涙が落ちた。 怖い事なんて、している。 君がそれ以上触ったらもう。自分が自分でなくなる。 きゅっと箇所を摘まれた。 喉から情けない声が溢れた。 嫌がる態度と反比例して、布を押して胸が立ち上がっていた。 見ている。見られている。全部、恥ずかしくて身悶えした。

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