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episode.6-5
君が好きなんだ。
未だ半年の記憶を遡っても、どうしてそんなに執着したのか分からないけれど。
目が、声が、姿形が、思想さえも、余す所なく鼓動を早め、一緒に居たい。
「ひ、あ…っ」
敏感な部分が温かい物に包まれた。
布越しに食んだ彼の、舌が胸の形をなぞる。
「ふ、や、戸和…」
驚愕する。必死に肩を押し返そうとした。
その手を絡め取られ、シーツの上に縫い止められる。
「、ぁ…!」
身体が戦慄き、処理不能な衝撃をやり過ごそうとして、細い糸の様な嬌声が漏れた。
乳首へじっとりと舌を当てられて、脊髄から痺れる。
柔らかく甘噛みされれば、次第に混乱を押し退けて疼きが襲う。
知らず知らず息も上がっていた。
焦点がぶれ、縋る物すらなく相手のシャツを握り締めた。
「、あっ…あ」
頬が瞬く間に紅潮した。
身体が勝手に、悦んでいる。
気持ち良い。違うの、止めて。
逃げ場もなくシーツの上を惑い、子どもが愚図る様な声を上げた。
「いいの」
「っぁ…んぅ」
「ん?」
漸く顔を上げた戸和が髪を撫でる。
至極熱っぽい問い掛けへ、まともな音すら紡げず身をくねらせた。
「沙南」
先の刺激だけでもう力が入らない。
聞いた例のないくらい優しい声に、頭の中まで痺れて呆然と見た。
「良い子」
目も、手つきも怖がる萱島を慮り、慈しんでくれているようだ。
その柔らかさに緊張が取られ、溜まった水滴がぼたぼたと零れ落ちていた。
「や、…やだ」
「もう良いでしょう」
「…き、なくなる」
「何?」
無理やりしても泣く、優しくしても泣く。
些か呆れ始めた青年の手前、目を赤くした萱島が消え入りそうな声で言った。
「し、仕事…できなくなる…」
「…は?」
突飛な単語に場が止まった。
この大きな子どもは一体何を言っているのか。
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