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extra.4-2

「しゃちょう」 「お前もう直ぐ出て行くんだから、いい加減俺離れしろよ」 「…出て行きたくないよう」 「なら家に居ろって言ったろ」 「自立しなきゃと思ったんです」 「じゃあ自立しなさい」 素直に返すならもっと早々に家を出ていた。 「……くそったれ」 「何だてめえ」 口調だけで怒りもしない。 元より興味がないのだから当然だ。 萱島は唇を尖らせ、益々相手にしがみ付いた。 「社長、何で筋肉付いてんの」 「さあ」 「腹筋割れてる?」 「セクハラはやめろ」 手を軽く叩かれた。 見上げた顔には、あからさまに「面倒臭い」と書かれていた。 「良いから和泉に構って貰え、彼氏だろ」 「そん…俺が麻雀があるから、競馬は良いやってなる人間とお思いか!」 「どんな例えだ」 「絶対メール弾かれてる…いつも全然社長から返事が返ってこない…」 「だって沙南ちゃん頭悪いメールしか送って来ないんだもん」 「…誰が中卒ですって?」 「言ってないだろ」 頭悪いメールだと。萱島は奥歯を噛み締めた。 確かに取り敢えず構って欲しさに、端から食べた物を送ってみたりはしたが。 しかし一通返そうものなら調子に乗るのだから、神崎の対処は頗る正しかった。 「もう部屋にお戻り。今日休みなんだから」 「絶対嫌だちくしょう」 「…この駄々っ子め」 不意に身体が浮いた。 あ、と思ったら持ち上げられていた。 完全に子供に対する扱いだ。 ネクタイを引っ張って不機嫌を露わにするも、相手は些か眉を潜めるだけに終わった。 「やめろ、セクハラだ…!」 「うわあ。今一瞬、お前を窓から放り投げたくなったわ」 「え…怒った?」 ぴたりと萱島の抵抗がやんだ。 「……」 無言でさっさと廊下を過ぎ、目的の部屋へ入る。 エアコンも沈黙しており、冷たい静寂が広がっていた。 ベッドに降ろされるやくしゃみが出た。 今思えば単に寒さに起きたのかもしれない。

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