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episode.7-4

「ちゃんとバランス考えて三食食べろよ、外食ばっかしてないで」 「…はい」 「戸締まりしっかりして、変なセールスは無視しろ」 「……」 結局此方が心配される。 離れた相手を恨みがましく見た。 何処か恬然とした様だった。以前より気の所為か曇りの晴れた表情に、萱島はようやっと力を抜いた。 彼の車は静かに去って行った。 ぼうっと上着に手を入れたまま立ち尽くした。呆けている暇なんて無かったが。 (そもそも社長が考えなしにぶん投げるから…) 其処で雇用主の顔を思い出した。 結局挨拶も出来なかった。 財布の中には勿論、彼の名義にくっつけたカードが入っていた。 「…駄目だ、さっさと片付けよう」 この寒い中何時までも考え込んでいそうだ。 一重に逡巡しようが仕方の無いことだった。 肩を竦め踵を返し、不慣れなエントランスの鍵を解除にかかる。 (ご飯が無い) 当たり前だ。 もう冷蔵庫を開けてチンするだけの日々は終わったのだ。 何も副社長の負担を増やしていたのは、社長だけではなかった。 無言で自省しつつ今日の計画を練る。 数時間もすれば宅配のラッシュで、考える隙間もなくなった。 すっからだった新居が見る間に埋まった。 対応していただけだがもう疲れた。 というより、何故だか心が荒んだ。 「…音が無い」 先から無いものばかり口に出る。 一人暮らしとはもう少し、気楽な筈だったのに。 ふと窓の外が目に入った。 此処の更に奥の住宅街へ進むと、一際高いタワーマンションが聳えていた。 (よう和泉) 窓枠に肘を突き、萱島にとっては絶景を眺める。 態々東十条近辺で探した目的はそれだったから。

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