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episode.8-3
「どうした」
「あ、親父…」
人垣を割った黒川が縁側を踏む。
胡乱な者を探す視線を彷徨わせていた先、今度はそれを遮断して萱島が詰め寄った。
「す、雀が」
「何だい」
「俺の所為で」
「お前が殺したのかい」
庭先で事切れた死体を見下ろす。
目を剥いたまま絶命していた。
ただの小動物だ。
それを不可解なほど焦燥を募らせ、支 える相手に眉を寄せた。
「…違うけど」
「廣田ァ、処分は後じゃ。終わるまで大人しい正座しとけ」
用件だけ言い捨て、菱田がさっさと奥へ潜っていく。
餌なんてあげなければ良かった。
終点に導いたのは、間違いなく自分がやらかした。
「面倒くせえなあ萱島、フケちまおうぜ」
首を折った男が背後から覗き込む。
埋葬してやらなければ。
ずきんずきん、焼き付いた光景に痛覚を刺されながら、屈んで雀へ手を伸ばす。
「あっ…」
「聞けよ」
上着の襟首を掴んで引っ手繰られた。
これまで以上に、不快な感覚が満ちた。
突き飛ばして振り払う。
舐めた拘束で助かった。
「触んな、糞野郎」
「くく…昔からさァ…てめえの前で生き物殺すとすげー面白えのな」
どうして救いようの無い屑ばかり湧くのだろう。
矢張り業界故か。
敵意を剥き出しに相対する萱島を他所に、男は漏れだす笑いを押し込めようともしない。
「でもお前だって殺ったじゃねえか」
すとん。
開き始めた心の隙間に、言葉が落ちる。
「なあ人間ってどんな味すんの?」
胃を鷲掴まれたかと思った。
それで他の内臓ごと、引っ繰り返された心地がした。
残像の小鳥がぐにょぐにょと形を変える。
そうして、明らかな子供の造形を成す。
雀みたいに小首を傾げて。愛らしい。
愛らしい姿に、喉元を噛み切りそうな負の情動が押し寄せていた。
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