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extra.6-1 「an everyday affair」

『何かね神崎君から断られてしまって、千葉君なら情けで頼まれてくれるかと思ったんだがね』 「それが社長、ウチ今大変な事になってまして…すいませんね」 珍しい光景だ。 始業から昼前まで居座って、休まず電話に出続けている。 渉外担当の千葉は専ら席を外し、本部には会議と報告に数回戻ってくる程度。 おまけに彼の5台ある携帯は引っ切り無しに鳴り続け、幾ら対人スキルの塊と言えど投げ出していたのに。 「いやあそんな事より社長、良い加減打ちに行きましょうよほらこの前の…赤坂の店紹介してくれるって言ってたじゃないすか」 『おおそうだったそうだった!いかんなすっかり忘れてた!』 往生際悪く渋っていた得意先が、180℃転がって笑い出した。 妙な素質だが、千葉は位の高い人間に好かれ易い。 別に、秀でたコミュニケーション能力と言って差し支えないが、厳密に言えば矢張り可愛がるのは要人だ。 入社して早々社長に見抜かれ、渉外班に放り込まれた。 しかも半年も経てば上に居た。 もっと適当に生きたかったのに。難儀な事だ。 「…はいはーい、じゃあまた」 何処ぞの代表の様にぶった切りはしないが。 一通り相手をし終えた千葉は、目に見えて機嫌が悪かった。 機嫌の悪い姿など数年ぶりに見た。 なんせ飄々として要領の良い人間だ。 彼が俄に携帯を投げ、歩き出し、メインルームを突っ切り始めると周りが思わず慄き道を開けた。 「お前いつから内勤になったん?」 視線を受け、面を上げた班長代表が怪訝に問う。 とは言え原因は承知していた。 何と驚いた事に、あの牧場主が新規受注にストップを掛けたのだ。 既存の案件は中間報告も終え、指針とフォーマットは固まりつつある。 まあ確かに件数がマトモでなく、これ以上タスクが積もれば誰かが発狂して本部に火を点けかねなかった。 「裕也くんは俺の集計手伝いに来たんだって」 「…まじで」 けったいな座席だった。 臨時にしろ、牧の隣に間宮が陣取って書面を睨んでいた。 「まあ丁度いいわ、これ船橋のサンプリングだから、お前纏めてくれ」 「ああ…千葉だけに?」 「八尾の報告書は俺が書くから」 「そうだな、間宮だけに」 「…何も掛かってねえな」

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