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episode.9-1 「You feel the lightning」

開口一番謝罪を零した貴方に、首を振ってやりたくて上手く行かなかった。 何時だって恣意に塗れ、自分の事に手一杯で、憂き身を窶し。 貴方の顔色さえ見れなかった。 それでもどうにか貴方を楽にしたくて、一言礼を伝えた。 アンバランスな瞳を携えた、貴方の肩の荷を降ろしてあげたくて。 微笑んだところで、下手くそに過ぎて口角も上がらなかった。 「…ごめんな」 まただ。 結果失敗して、相手の謝罪を引き出してしまった。 会食を蹴って病室に駆け付けた本郷へ、萱島は名状しがたい悲しみを覚えた。 「和泉、連れて来られなかった」 正直、その件は有り難かった。 彼でなく、この上司が現れた事は救いになった。 会いたくないとは言わない。 けれど駄目だ、今彼を邪魔したら、一生後悔する。 「電話が未だ繋がらなくて、話せてないんだ。これから御坂の所に行って直接会おうかと…」 「要らない」 病室に雑音が無かった為かもしれない、いやに細い声が空気を割る。 「お願い、言わないで」 「…萱島」 伝えた所で彼はどうするのだろうと考えた。 親友を置いてやって来る。 冗談じゃない。 親友の側に居る。それで正しい。 然れどその時自分は…端から解けて色んな物が崩れて行くかもしれない。 馬鹿馬鹿しい。結局エゴに還る。 「何も言わないで…」 この上司は絶対に、自分を頭ごなしに撥ね退けたりしない。 黙って逡巡する姿に手を伸ばし、心細さから抱き着いた。 腕を離せ。 体温に縋り付き奥歯を噛んだ。 許し難い事に、制御出来ないストレスが彼を引き摺り込もうとしていた。 「ねえ…本郷さん」 いけない。こんな事をしたら、この人まで壊れてしまう。 「本郷さん助けて」 案の定呆然と此方を見据える顔が、瞬く間に色を欠く。 理解に努めようとする。 彼の全霊の優しさが自分に向くのを、とても嬉しく、哀しく感じた。 「息が出来ない」 嗚咽もなく泣き出した。 最低だ。 手を掴んだら、何があっても彼は離せない。 「最初から、やり直したい」 消え入りそうに漏らした矢先、温かい手に抱き締められた。 その体温を身に受けて思った。 まるで死神だ。 1人消えれば良いものを、また奈落へ道連れを引き込むのだ。

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