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第3話 音
走って走って……気がついたら誰もいない暗い山の中にいた。
追ってくる人もいない。
そして、とうとう体力の限界が来てその場に座り込む……。
荒れた息が整うと、寒さに気が付いた。
「さむい……」
よく見たら吐く息が白い……。
「ここ……どこなんだろう……」
辺りを見渡してみるが真っ暗でなにも見えない。
今日は新月だったようで、辺りは闇に包まれていた。
「どうしよう……帰らなきゃ……!」
唐突に思い出す。帰りが遅くなると、村長に怒られてしまう。
殴られるなんてこともあり得る…。子ども達も怖かったが、村長の方がもっと恐ろしい……。
とにかく帰らなければと焦りが生まれるも、どっちに行ったら村に帰れるのかがわからない。
「どうしよう……」
段々と焦りで周りが見えなくなってくる。寒さで頭も痛くなってきた……。
ここまで来て、ようやく、今日は自分の体調が悪かったことを思い出す。
『…ぴ…ちゃん……』
「え……?」
ふいに音が聞こえた。耳を澄ましてみる。
『…ぴちゃん……』
「みずの…おと……?」
僕は体調が悪かったことも忘れて、無意識に音が聞こえる方を目指して歩いていた。
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