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そうだ、ネムリという名前をつけよう②
※ ※ ※
「おい、おい……ネムリ――起きろ!!」
「ん……なんじゃ、旦那さんか――如何したのだ?」
「―――これから、学校に行く。昨日、夢々と――約束しちまったからな。それに、そろそろサボると流石にヤバい……って事で――お前、昨日みたいに擬態しとけ」
と、そのような経緯で――ネムリには俺が大好きなフワッフワなクリーム色の毛を持つポメラニアン(俺は犬好きだ)に擬態してもらった。ちなみに、俺と夢々が通う大学は犬猫を連れてきてもOKという大変寛容な大学なのだ。正直、それがあったおかげで大学を選んだようなものだ。
そういや、これも余談だが――夢々は俺が通う大学の校長の息子だ。しかし、なかなか親子仲がうまくいかず、夢々は束縛と不自由だらけの息が詰まりそうなくらいにギスギスしいた親元から離れて、悠々自適に独り暮らしを満喫している最中なのだ。そんな金持ちボンボン息子の夢々が心配で心配で堪らなかった俺が半ば強引に彼を追いかけて―――今に至る。
ガチャッ…………
「お……っと……」
「…………」
大学に行く為の準備を済ませて、ちょうど玄関の扉を開けると――タイミングの良いことに隣の部屋から夢々が出てきた。てっきり、いつも喧しい夢々の事だから何か文句でも言われるかとも思ったのだが心なしか夢々の様子が沈んでいるように見える。まあ、単なる寝不足か何かかもしれないが―――。
「……おい、おい―――夢々!?」
「……んっ…………ああ、なんだ……ゆうちゃんか~……おはようっ!!」
「ああ、おはよ……っ……て――お前、何か目が赤赤くないか?」
ぴとっ……と思わず怪訝そうに此方を見つめてくる夢々の頬を撫でてしまった。その時、一瞬だけ目の前にいる夢々が切なげな表情を浮かべた気がしたのだが―――、
「よ~す、おはようっ……お二人さん!!朝からイチャイチャして仲がいいね~!!」
普段から通学を共にしている別の男友達が声をかけてきたため、慌てて夢々の頬から手を離してしまう。そして、その後は――いつも通りの生意気で減らず口を叩いてくる夢々に戻ってしまっていたため特に気にする事もなくポメラニアンに擬態しているネムリを引き連れて大学へと向かって行くのだった。
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