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第3話

電車を降りるとすぐ、エリが言った。 「あー、潮の香りがするわ~。来たねぇ、海!」 駅から海水浴場が見えた。 バッと気持ちよく開けた視界に、穏やかな海が、日射しでキラキラしてて 俄然テンションが上がってくる。 「あっつ~!今日はメッチャ焼けそうやな。あ、みんな、日焼け止め、持ってきた?」 クミの言葉にヒナが反応した。 「日焼け止めなら、持ってるけど。クミちゃん、使う?」 「使うー!助かったわ~、ありがと、ヒナ。」 その流れでか、タケがカバンから取り出した日焼け止めをマツと一緒に顔へ塗りだした。 ―まぁ、ええけどな。 クミに鏡を借りて、白残りしてないか2人でチェックしよる姿に、少しだけ、モヤッとした。 帰りも電車移動やし。 女子もおるし、そのんがええやろ、いうことで、手近な海の家で着替えやシャワーをすることにした。 「こないしたら、荷物も預けれて、楽チンやな。」 「そやね。あっ!アレあのドラマの看板やない?わぁ、コラボ企画やて!タケくん来て。見に行こ♪」 クミがタケの腕を掴んだ。 「うわ!!見てみ!あっちの店なんか、シャンデリアにソファーやで!?」 「あたし、あの宮崎地鶏ヤキソバって、食べたいわ~」 思いおもいの事を言いながら、はしゃぐみんなの後ろ姿を見ながら ―レジャーシートとビーチボールは、要らんかったな。 俺はサンオイル片手に、ぼんやり突っ立っとった。 「おにーさん。ソレ、塗ってあげようかぁ?」 サングラスのニヤけた男が、俺に声を掛けて来た。 「いや。結構です。」 断って、マツのいる方へ歩き出したけど 「あっ。あのオトモダチ、あのコとちょっとええ感じやない?」 そう言われてよく見れば、マツはヒナと、肩寄せあって、なんや仲良う話しとる。 「あんま、邪魔せんといたりや。ほな、またな~。」 ヒラヒラと手を振ると、その人は向こうへ行った。 クミとタケ。マツとミナ。 余ったんは…エリと俺、か。 ―しゃあないなぁ。 何となく、それとなく、エリを探しながら、俺はタケのおる方へゆっくり歩いた。

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