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第6話

「それにしても。あっついなぁ」 ぼやいたタケの目がキラッと光った。 「う…うん、あついなぁ。」 「ほな、冷やしに行くで!」 「え。ええっ!?」 へっぴり腰のまま、俺はタケに波打ち際まで引きずられた。 「わ、つめたっ!」 「うりゃ!!」 タケが手に一杯掬った水を俺の背中にかけた。 「やめろや!」 「ほらほら」 バシャバシャと遠慮なく水飛沫が飛んでくる。 「ちょ、待てや!やめろって」 「こっちや!ヒロ。」 笑いながら、向こうへいくタケを追い掛けて どんどん深い方へと、俺は向かった。 ―ドブン 「っ!?」 いきなり足が着かん深みに嵌まって、驚いた。 「ヒロっ!大丈夫か!?」 慌てて戻ってきたタケが、心配そうにコッチを見とる。 「あ、…うん。何とか。」 「泳ぐん、得意やもんな。」 眩しそうに目を細めた笑顔は、ビックリするくらい儚くて、胸が苦しくなった。 「あ。うん…スイミング通ってたからな」 「ほな、もうちょっと沖、行こか」 みんなから離れて沖まで来ると、何か決めたような、そんな顔でタケが耳元で囁いた。 「ヒロ。…好きや。」 ―へ? 次の瞬間、俺の唇に何かが触れた。 ―い、今のって… 頭と一緒に体もフリーズした。 「おいっ!?なんで沈んでいくねん?しっかり泳げや!」 「せやかて…いっぺんにそないに色んなこと、でけへんもん。」 泳ぎながらの告白にキス。 もう頭も胸も、パンパンや。 ついでに言うと、下半身もパンパンになりつつある。 他の部分とは別の意味で。 「ヒロ、シンドイんか?いっぺん、あがろか?」 「いや、あの…」 「なに?」 「俺もタケが…。そやから、色々苦しいねん。」

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