9 / 10
第9話
海の家に戻ったら
そこには、カレーを食い終わったらしいマツと、チビチビうどんを啜るヒナがおった。
「あれ?なんや2人して、もうあがっとったん?」
「ぅ、うん。」
「そやねん。ヒナちゃん、途中からお腹痛いて言うてな、そやからずっとオレとココにおってん。」
「えーっ!?」
コレには、俺もビックリやった。
お調子者のマツとも思えへん、親身な行動…。
「まぁ、そんな訳で、オレ、今からヒナちゃん、送って行くわ。」
「はあっ!?」
思わずタケと一緒に叫んでもうた。
「ヒナはそれでエエの?マツくんやなくて、私かエリが付き添おうか?」
「ううん。」
ヒナはゆっくりと首を振った。
「そっか。マツくんもう着替えてるし。一緒にご飯も食べたんやから、すぐ行けるもんな。…頼まれてくれる?」
「もちろん。そのつもりや。」
どういう事や?
なんでか、マツが爽やか好青年に見える…。
「ヒナ、気を付けてね。」
「うん。」
「マツ。送りオオカミになったら、アカンで!?」
タケの言い種に
「アホか!ヒナちゃんは病人やぞ?」
珍しく、マツがマジな様子で言い返した。
「冗談やんか。ほな、またな。」
「ああ、またな。」
そんなこんなで、4人揃って、2人を見送った。
「なぁ、あの子、あんなパーカーなんて、着てたっけ?」
クミが首を傾げた。
「あー。あれはマツのやな。」
タケがニヤついた顔で答える。
「へぇえ。なーんや、マツくんて、そうやったんか~。」
「まぁ、そういうことやな。」
ニヤニヤするんをやめて、タケが真顔でクミに訊いた。
「で?ソッチは順調なんか?」
「うん、お陰様で、メッチャ順調よ。ソッチもすっかり2人の世界みたいやったけど?どないなん?」
「ソッチに負けん位、メチャメチャ順調や。」
「そうやんな?おケツにクラゲ、つけとる位やもんな~?」
「ばっ!あ、アレはやな…」
タケが何か言い掛けた瞬間、エリが真っ赤になって叫んだ。
「アカン!ソレは今ここで言うたらダメ!!」
「「えっ!?」」
俺らは、顔を見合わせた。
「と、取り敢えず、何か食べへん…?。」
ごまかすように笑ったエリの首筋には、来た時は無かった、赤い痕がくっきりとついとった。
『おしまい』
ともだちにシェアしよう!