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4-1 ティアマット討伐
町に着いて驚いた。まさか街道沿いにティアマットのようなA級モンスターが現れるなんて思ってもいなかった。
ティアマットは巨大な体を持つ多頭のドラゴンだ。とは言っても竜人族とはそもそもが違う。
竜人族は人の姿で産まれ、人の姿で生活をする。魔力を解放したり長距離を移動するときに竜化することはあるが、基本的には人の姿だ。
それに対してモンスターとしてのドラゴンは人の姿を持たず、持ったとしても半人半獣の姿が精々だ。産まれるときも卵で産まれてくる。
だからと言って知性がないわけではない。群れで狩りをするモンスターもいるし、罠を使うモンスターもいる。この世界のモンスターは決して弱くないのだ。
町の信頼出来るギルドにマコトを預けてきた。
あそこのギルドマスターは現役時代はS級の冒険者で、結婚して奥さんと子供が出来たからと引退する前は俺も何度か世話になった。口も目つきも悪いが人間性はいい相手だ。
そういう人物にマコトを預けてきたのはほかでもない。この辺に闇商人と、それに品を下ろす冒険者がいるという話を前の町で仕入れたからだ。
この騒ぎでそうした奴が留まっている可能性がある。
マコトは可愛くて非力だ。そしてまだ、この世界の住人として登録をされていない。
この状態で闇商人に渡ったら、後は悲惨な人生のみだ。どこぞの金持ちに買われ、一生を性奴隷のように扱われる者もいると聞く。
危険な仕事をさせられたり、稀少なモンスターを誘き出す餌にするという話も聞く。
大昔ではあるが、稀少なモンスターとそうした人間を交配させて子を産ませようとしたバカもいたらしい。血の気が引く。
そんな事にはさせられない。俺はマコトをギルドマスターに託し、何かあったときの事を考えてあの子が一生を困らない程度の金を預けていった。
金は要らないとマコトは言ったが、俺は心配だった。
目撃例の多い街道を森へと入っていったが、空振りだ。ティアマットは知性も高い。俺の気配を感じて身を潜めている可能性がある。相手の力を感じられないモンスターではない、近づかないのだ。
これで食事に困れば飢えて襲ってくる可能性もあるのだが、現在奴は狩りたい放題だろう。何せ周囲の森にはB級程度の大型モンスターや中型モンスターがいる。どれも奴にとっては取るに足らない獲物だ。
探すのに手間取れば、それだけ時間を使ってしまう。マコトの側を離れてしまう。
焦ってはいたが、追うことができず探し歩く時間が長い。好きそうな場所を探すのだが、気配がない。
ふと、前日のフレイムハウンドを思いだした。
若いものだった。もしもあのフレイムハウンドがはぐれた原因が、突如現れたティアマットにあるとすれば…。
俺は周辺の森の地図を出して、モンスターの生息域を確かめる。厳密に決まっているわけではないが、ある程度の生息域が別れている。
フレイムハウンドの生息域は現在の場所から二〇キロ東の深い森だ。
「行くか」
確信があるわけではない。だが、闇雲に探すよりはとっかかりになる。思い、俺は森の中をひたすらにフレイムハウンドの領域へと向かっていった。
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