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5-2 罪と甘美な花の蜜

 だが、マコトの方が限界だったのだろう。ジワリと黒い瞳に涙の膜を作り、伸び上がるように頬に触れて唇に触れた。  触れるだけの不器用なキスは、だが俺の理性を揺らす事に成功している。 「マコトっ」 「ふっ…うぅ…」  僅かに、息継ぎのように離れた隙間に名を呼べば、熱に浮いた甘い声が漏れ出てくる。鼻に掛かる切ない声に、俺はオズオズと応じた。  唇を軽く舐めれば、マコトは素直に俺を招き入れてくれた。  たまらずに舌を差し込みそこかしこをくすぐり、舌の根も絡めていくと快楽になれない体は一気に熱くなっていく。音を立ててやればそれにも反応し、小さな唇から飲み込めなかった唾液がこぼれ落ちていく。  その光景すらも淫靡で、俺の理性は音を立てていく。  確かめるように体に触れた。柔らかな体は手に吸い付くように馴染む。胸を、腹を撫でてやれば腕の中の体は悶えた。  その艶めかしい姿に俺も苦しくなる。初めてだ、こんなに興奮しているのは。彼と交わる事だけに意識がいき、それはダメだと引き留めている。  俺はこっそりと魔法で自らの根元を戒めた。反応してしまうのは雄としてもう仕方がないと許すが、これをマコトにぶつける事だけはしない。  熱を孕み腫れて主張するそこは適度に痛みを脳に伝え、俺の理性を引き戻してくれる。 「マコト、気持ちいいのか?」  壊れそうなほど何度もマコトは頷いた。その表情には快楽はあっても拒絶は感じない。胸にしなだれ身を任せる姿には信頼を感じる。  信じているんだ、俺の事を。だからこそ、俺は拒まれていない。  ズキッと、胸に痛みがある。俺はこの信頼を裏切れない。例えば幼い子が兄を慕うように、親しい者に安心しきっている。俺が肉欲に溺れれば、産まれ始めた感情を突きつければ、関係は崩れてしまう。  ならばやはり、俺は今だけこの体に触れよう。求められるままに導き、熱を吐き出させてあげよう。 「はぅ! ユーリスさん」  硬く張り詰めた胸の突起を摘まみ、こねるように弄れば切なく高い声が上がる。縋るように何度も浅く口づけて、マコトを見つめている。見つめる瞳に、誘う様な様子を見る。欲している様な切なさが見える。  まさかだ、色欲がそう見せているだけだ。  思い、同時にきっと俺のを見れば、マコトは尻込みするだろうと思った。 「いいのか?」 「お願い…熱い…」 「…戦ったばかりで、抑えがきかないかもしれない。それに…」 「あ…」  からかう様に言って、俺は視線を自分の浅ましい欲望へと向ける。マコトの視線もそれを追って、一つ震える声を漏らした。  どれだけ熱に浮かされても、徐々に覚めてきたのだと分かるマコトはその大きさにおののいた。  完全に立ち上がった高ぶりは堂々と天を向いて反り返っている。人族の子供の腕ほどには長大で、大人の拳ほどには太い。これを受け入れるのは苦痛が伴う。ほぼフィストファックだ。泣き叫ぶ者だっている。  俺はマコトの高ぶりを握り込み、軽く上下した。トロトロと既に溢しているそこは滑らかに動かせる。嬌声を上げたマコトはピンと体を強ばらせ、背を弓なりに反らせた。 「俺のも、握ってくれないか?」  欲望が溢れる。この色気に飲まれる。  マコトはおずおずと俺の高ぶりに手を伸ばし、上下に撫でる。それだけで俺の背には鋭い快楽と達せられない痛みが走った。 「くっ…あぁ、気持ちいいよ…」  言えば、少し嬉しそうな顔をする。それが実に愛らしかった。  マコトのものを高めるように上下に扱き、先端を押し込むようにする。硬く張ったカリにも指をかけて刺激すれば、マコトは何度も嬌声を上げて体を捻り頭を振る。  それでも不器用に俺のものに触れてくれるのだ。愛しく、そして可愛い。小さな手では俺のものは余るだろうが、それでも必死でしてくれるのは嬉しい。  俺はマコトが熱を放ちやすいように動きを加速させていく。細い体は強張り息を詰め、そして一際高く声を上げると俺の手の中に溢れるほどの精を放った。 「あ…ごめんなさい…」  幾分冷静になった声が、俺に何故か謝罪する。あたふたとしている理由が分からない。謝るのは俺の方だ。こんな風にしてしまった俺が悪いんだ。 「どうして謝るんだ?」  問うと切なく見上げ、俺の手に手を重ねてすり寄ってくる。切ないその表情が何を思っているのか、俺には難題だ。 「苦しいのは収まったか?」 「…はい」 「それなら、後は寝よう」 「…え?」  驚いた様な表情に、俺の方が驚いた。目を丸くして見つめれば、マコトはちょっと驚きながらも、なんだか怒っているようだった。 「あの、ユーリスさんは」 「俺はいいよ。適当に処理しておくから」  流石に一度出さないと眠れない。戒めた根元が痛むし、脈を打って辛い。出来れば早く離れて、シャワーを浴びながら吐き出してしまいたかった。

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