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7-2 離したくない

 その翌日は順調だった。  マコトはやはり人族だ。周囲にある何でもない物を便利な道具にできる。落ちていた太めの枝を手にして何をするのかと思えば、それを支えに山を登り始めた。  なるほど、こうすれば足への負担が減るのか。  それでも心配で時折マコトを振り向いて、離れないようにしてしばらく、見晴らしのいい崖沿いの道へと出た。もう頂上は近い。  この辺に来ればモンスターは少ない。片側は森だが、既に竜人がいるような場所でモンスターは動きが鈍い。気配を察して身を潜めるのが普通だ。  マコトはこの光景が珍しいのか、崖沿いに膝をついて下を覗き込んでいる。下は切り立った崖になっていて、その下は川だ。 「あまり崖の縁を歩かないでくれ。落ちたら大変だ」 「うん」  青い顔をして、そろそろと後ずさりしているから危険性は分かっているようだった。  道幅もあるから、俺は前を歩きつつ後ろを振り向いてマコトの様子を見ている。ここを超えれば竜の国、黒龍の領域はすぐだ。  そんな事を考えていたからだろう、反応が遅れた。  ミシミシという音が聞こえた時、マコトは大分後ろにいた。足を止めてしまったのだ。そしてそこに、モンスターの爪が迫っていた。 「マコト!」  血の気が引いた。ファフニールは大型のドラゴン種だ。その動きは俊敏で、爪は強力だ。マコトの体など簡単に砕ける。  俺は走りより、マコトの体を抱きかかえた。同時に体の装甲を硬化させたが、完全にはできなかった。爪の数本が柔らかな脇腹を抉り、衝撃に谷底へと落ちていく。  抱きかかえるマコトは、気を失っている。無事かどうかも分からない。でも、体はまだ温かい。  意識が途切れる。それでも、マコトだけでも救わなければ…。  力を振り絞って皮膜の翼を広げて落下の速度を落とそうとするが、その度に抉れた脇腹に痛みが走ってどうにもバランスを崩す。  谷底に落ちる、でもマコトがここから落ちれば無事ではない。振り絞るように俺は風の精霊を操り地面との間にクッションを作った。  マコトの体を上に。俺の体でマコトを包むように下にして、それでも衝撃を消しきれなかった。  背中から叩きつけられた俺は、そのまま気を失った。ただ最後まで、腕の中の彼が無事である事を願っていた。

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