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10-2 伝えたい想い

 それでも、マコトの足取りはそこから途切れた。何の情報もなくなってしまって、周囲に目撃者もなかった。  マコトが消えて1ヶ月以上がたって、俺はとうとう黒龍の領域全土に探し人の札を出した。  俺から逃げいるマコトがこれを見たら、余計に逃げるかもしれない。思って出せなかったが、もうなりふり構っていられない。  俺が限界だ。例えマコトが逃げたとしても、情報さえ手に入ればそこを追って行く。そのつもりだった。  立て札を立てた翌日の事だった。俺宛に、魔法便の手紙が届いた。  覚えのないそれを手にした俺は、そこから伝わるマコトの気配に手紙を抱きしめた。  マコトだ。この手紙に俺への思念を乗せたのは間違いなくマコトだ。彼の気配を俺が間違えるはずはない。  急いで手紙を見ると、差出人はモリスンという全く知らない人物からだった。中を改めて、俺は言葉もなく立ち尽くした。  手紙には、モリスンという人物がマコトを保護した経緯から、現在までの様子が丁寧に書かれていた。  1ヶ月程前、王都で偶然に彼の妻がマコトを見つけた事。何やら事情があるのだろうと思える様子に、心配したこと。仕事を探すというマコトをこのまま出す事に抵抗があり、自分たちが営んでいる食事処で給仕の仕事をしないかと持ちかけ、受けてくれた事。  元気に仕事をして、笑顔も見せてくれて、店に馴染んでいる様子。けれど夜、時々辛そうな顔をしていること。  昨日立て札の事を常連の客から聞き、様子がおかしくなって詳しい話を聞いた所、俺との事を話し出した。そうして今、手紙をしたためている。  俺は彼の無事で元気な姿に安堵した。モリスンという人物にはどれほど感謝してもし足りない。彼ら夫婦がマコトを慈しんで、支えてきてくれたのは伝わる。  会いに行くのがいいのか。でも、マコトはまだ苦しんでいるかもしれない。俺の顔をみることを拒むかもしれない。  思い、決断出来ずにいる俺の目に、モリスン氏からの最後の言葉が飛び込んできた。 『マコトはまだ、貴方との関係を清算出来ていません。そしてその心は、まだ貴方の側にあるのだと感じます。 どうか、直接そのお心を語ってあげてください。もう一度、ちゃんと殿下と向き合うようにマコトには伝え、了承を得ました。どうか、あの子ともう一度向き合って頂けるよう、お願い申し上げます』 「ジェノワ、マコトが見つかった! 迎えに行ってくる!」  側近のジェノワへと言葉を投げるだけで、俺は飛び出して行った。竜化し、そのまま真っ直ぐに王都へ。俺は、マコトを迎えに行くのだ。

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